2017 Fiscal Year Annual Research Report
優生学の歴史と新優生学の展開:医療・教育・福祉における言説と実践の比較分析
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17H02603
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
北垣 徹 西南学院大学, 文学部, 教授 (50283669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 明弘 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (10359474)
中馬 充子 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (40261078)
川上 具美 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (50631272)
田中 友佳子 (田中友佳子) 九州大学, 人間環境学研究院, 学術協力研究員 (70707174)
K.J Schaffner 西南学院大学, 国際文化学部, 教授 (80195619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 優生学 / 優生保護法 / 障害学 / 保健科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年5月に西南学院大学にて研究会議を開催し、研究代表者である北垣徹が司会を務め、先ず自身が、「労働する生-優生学の政治的無意識」と題する報告を行い、その後、研究分担者、連携研究者、及び、研究協力者が各自の研究計画を発表した。7月には西南学院大学生命倫理研究会分科会「生命倫理の学際的研究」を西南学院大学にて開催し、『日本が優生社会になるまで』(勁草書房, 2015)の著者である横山尊を招聘し、「拙著『日本社会が優生社会になるまで』が生命倫理の学際的研究に為しうることー相模原障害者殺傷事件から1年を踏まえて」と題する講演を行って頂き、研究分担者である中馬充子が討論者として、書評を含みつつ、この講演に対する批評を行った。その後、横山氏と参加者達との白熱した討議が展開された。当分科会には自立生活センター久留米代表の古川克介氏も招待し、障害者の観点からこの講演に対する感想を述べて頂いた。2018年3月には、西南学院大学大学院にて公開シンポジウム「優生保護法下で何が行われたのか」を開催した。立命館大学生存学研究センターの利光惠子氏、福岡合同法律事務所弁護士の久保井摂氏をシンポジストとして招聘し、前者は「戦後日本における障害者への強制的な不妊手術をめぐって」と題する報告を、後者は「優生保護裁判と国家賠償への展望」を題する報告を行った。また、前述の横山尊氏と分科会員である、日本薬科大学元教授、波多江忠彦氏にコメンテーターを務めて頂いた。加えて、前述の中馬充子もシンポジストとして登壇し、「優生思想を支えた戦後の保健科教育」と題する報告を行った。当シンポジウムにはマス・メディアの記者も招待し、熊本日日新聞の4月8日付けの記事でこのシンポの内容が紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「研究実績の概要」で述べた研究会・シンポジウムを開催し、外部からの講師を招いて研究を行う一方、研究代表者・研究分担者・連携研究者がそれぞれの分野での研究を遂行した。研究代表者の北垣徹は、2018年3月にパリのシアンス・ポで開催されたコロック「ヨーロッパ公共空間における習俗の概念:18、19世紀」に参加し、「モラル・トリートメントと革命期の習俗」と題して、フィリップ・ピネルの精神医学的実践を取り上げた。連携研究者の藤井陽一は、2017年11月にロシア科学アカデミー哲学研究所にて開催されたフロロフ記念定期研究報告会で「知識社会学の観点から見た生命倫理学とマルクス主義ヒューマニズム」と題した報告を行った。また研究分担者の田中友佳子は、2017年12月に開催されたアジア教育学会に参加し、同じく研究分担者の中馬充子は2018年3月に開催された呉秀三「精神病者私宅監置ノ実況」刊行100周年記念フォーラム・メンタルヘルスの集い(第32回日本精神保健会議)に参加した。また連携研究者の河島幸夫は、2018年2月に東京古書会館・上智大学、また神戸の賀川記念館で文献調査・資料収集に当たる一方、翌3月に岡山大学で開催された西日本ドイツ現代史学会に参加した。このようなかたちで、現在までのところ、各研究代表者・研究分担者・連携研究者はそれぞれの領域において、当初の計画の内容をおおむね順調に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の北垣徹は、引き続き全体の統括や研究会・シンポジウム開催を行うと共に、研究の対象を精神医学と優生学の関連に限定していく。11月10日・11日には、第22回日本精神医学史学会を大会長として本学で開催し、そこでも国内外の研究者を招聘しつつ、関連コロックを開く予定である。カレン・シャフナーは、学長業務の中で多忙を極めるが、今年度中にその任期は終了を迎えるので、その後は日本およびアメリカ、ドイツにおけるキリスト教の優生学との関わりを調査する。山根明弘は、1970年代以降に現れた優生思想・優生政策への批判と、今日新たに支配的となりつつある新優生学的な言説や実践との連関ないし断絶の問題を、遺伝子についての一般の見方・捉え方という視点から検討する。中馬充子は、仮説「優生学史研究における科学者の責任は極めて重大であると言わざるを得ない」の検証を試みる。また、当時の国家と科学者の関係性については、とりわけ世界でも稀な極度の中央集権性を特徴とした警察の衛生行政と内務省衛生局にも焦点を絞る。川上具美は、日系およびユダヤ系移民の孤児や浮浪児の研究を続け、第一次資料による検証を進めるためにハワイの日系人センターやロサンゼルスの全米日系人博物館やコロンビア大学図書館を訪問し資料収集をする予定である。田中友佳子は、1920 年代末から本格的に展開された乳幼児愛護運動における「先天性虚弱児」対策や妊産婦保護、さらに「棄児」「孤児」「不良児」「浮浪児」と呼ばれた子どもたちへの眼差しや養育技法がいかに変化したかにまで視点を広げ、優生学的思想が児童保護事業の展開においてどのような役割を果たし、植民地期朝鮮へと流入したのかを示す。連携研究者の河島幸夫、山崎喜代子、藤井陽一も、それぞれの研究を深めるべく、昨年と同様の調査旅行を行う予定である。
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Research Products
(18 results)
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[Book] 現代にゃん語の基礎知識20182017
Author(s)
鈴木美紀, 山根明弘, 常安有希, 山本葉子, 芳澤ルミ子, 瀬戸内みなみ, 池迫美香, 中島祥子, 前田理子, 北辺武朝
Total Pages
159
Publisher
自由国民社
ISBN
978-4426123802
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