2018 Fiscal Year Annual Research Report
優生学の歴史と新優生学の展開:医療・教育・福祉における言説と実践の比較分析
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17H02603
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
北垣 徹 西南学院大学, 文学部, 教授 (50283669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 明弘 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (10359474)
中馬 充子 西南学院大学, 人間科学部, 教授 (40261078)
川上 具美 西南学院大学, 人間科学部, 准教授 (50631272)
田中 友佳子 (田中友佳子) 九州大学, 人間環境学研究院, 学術協力研究員 (70707174)
K.J Schaffner 西南学院大学, 国際文化学部, 教授 (80195619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 優生学 / 国民優生法 / 優生保護法 / 強制不妊手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度7月20日(金)には、生命倫理学研究会を開催し、まず第一報告者の田中友佳子(研究分担者)が「朝鮮優生協会と機関誌『優生』に関する論文紹介を行った。続いて、第二報告者の藤井陽一(研究協力者)が、その前年度に行ったモスクワ出張の報告(ダーウィン国立博物館での遺伝子学者ニコライ・ヴァヴィーロフ生誕130年記念特別展示展で撮影した写真の解説)の後、研究報告「ロシア的な《新しい人間》概念と優生学に関する批判的考察」を行った。11月10日には、日本精神医学史学会との共催で、エマニュエル・ドゥリル(外部から招聘された講師)が「制度所蔵資料とエゴ・ドキュメント」と題された講演を行った。翌11日には、北垣徹(研究代表者)が「動物磁気論から催眠論へ」と題された講演を行い、またシンポジウム「狂気内包性思想をめぐって」では、加藤敏・内海健と共に、大澤真幸(外部から招聘された講師)が「狂気内包的なカント」と題された報告を行った。2月22日(金)に行われた生命倫理学研究会では、藤井陽一(研究協力者)が「ゲノム科学と人類の未来」、3月23日(土)には、前年度に引き続き、シンポジウム「優生保護法下で何が行われたのか」を開催し、そこではまず岡田靖雄(外部から招聘された講師)が「国民優生法、優生保護法と精神科医」と題された講演を行い、続いてカレン・シャフナー(研究分担者)が「不正を正すための努力:アメリカにおける強制不妊手術に関する謝罪と償い」と題された報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「研究実績の概要」で述べた研究会・講演会・シンポジウムを開催し、外部からの講師を招いて研究を行う一方、研究代表者:研究分担者・研究協力者がそれぞれの分野での研究を遂行した。研究分担者の中馬充子は、8月に国立国会図書館・東京大学医学図書館に赴き、また2月には東書文庫、3月には東書文庫・国立遺伝学研究所・千代田区立図書館等に赴いて研究活動を行った。研究分担者の川上具美は3月に、アメリカ合衆国シカゴ市、6学校:チャータースクール(Instituto Health Sciences Career Academy)および普通公立学校(Telpochcalli School)の特別支援クラス、シカゴ市内にある二つの特別支援学校(Chicago high school for agriculture、Vaughn Occupational high school)普通公立学校における重度特別支援クラス(Burbank School)、公立マグネットスクール(Suder Montessori School)を訪問し、教育の市場化の中で教育から疎外されている障害を持つ生徒について、学校現場や教師・教育研究者から調査を行なった。研究協力者の河島幸夫は、9~10月にドイツに赴き、ミュンスター大学司教区史研究所および司教座資料館、ボンの現代史研究所、エッセンのフランツ・サーレス・ハウス資料室等で研究活動を行った。研究協力者の藤井陽一は、11月にモスクワのロシア科学アカデミー哲学研究所、ゴルバチョフ財団アーカイブ、ロシア国立図書館、サンクト・ペテルブルクの衛生学博物館、キーロフ博物館等に赴いて研究活動を行った。研究協力者の山崎喜代子は3月に、三島および東京で第1回日本遺伝学会春季分科会『遺伝学の将来を考える』「第3回新生児生命倫理研究会」などに参加した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の北垣徹は、引き続き全体の統括や研究会・シンポジウム開催を行うと共に、研究の対象を精神医学と優生学の関連に限定していく。研究分担者の田中友佳子は、昨年度に収集した大韓家族計画協会の関連資料などをもとに、1960~70年代大韓民国の人口政策と優生思想の関連について分析を行う。研究分担者の中馬充子は、公開シンポジウム「優生保護法下で何が行われたのか」(2018年3月)における中馬充子「優生思想を支えた戦後の保健科教育」を研究成果として取り纏める為に、当該関連教科書類の蒐集をほぼ終え論文執筆中である。また、引き続き、仮説「優生学史研究における科学者の責任は極めて重大であると言わざるを得ない」の検証を試みる。研究分担者の山根明弘は、昨年度に引き続き、福岡県相島で新しく生まれた子猫のDNAサンプルを採集し、父子判定を行う。研究分担者の川上具美は、2019年3月に行なったアメリカにおける調査から得られたデータを分析し、その結果を11月に開催される九州教育学会において発表する。成果は、論文として大学内の論集に投稿する予定である。研究協力者の藤井陽一は、モスクワ哲学研究所の生命倫理学研究者とエンハンスメントに関する共著の論文(ロシア語)を執筆する一方で、フロロフ記念定期的研究報告会の主催者から発表会に今年も招待されているため、今年度再びモスクワの哲学研究所で学術報告を行う予定である。研究協力者の山崎喜代子は、駒井邸の書斎資料の閲覧が可能になると思うので、調査を進める。また、重症遺伝病遺伝子についての選択的淘汰に関する駒井の戦後の展開を検討することによって、駒井の研究は終了する。その後論文作成をする予定である。河島幸夫は、引き続き戦前・戦後の優生学とキリスト教の関わりについて研究を進め、ドイツのカトリシズムと日本のプロテスタンティズムを中心に研究資料の整理と論文の作成を期する。
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Research Products
(11 results)