2017 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期における就労、地域、家庭内活動のバランスとコンフリクト
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17H02619
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
小林 江里香 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (10311408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ボランティア / 高齢者就労 / 家庭内労働 / 健康 / 社会参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 2012年開始パネルの追跡調査の実施 2012年に全国から無作為抽出された60~92歳の高齢者の初めての追跡調査を、2017年9月末~12月に実施した。これらは、1987年から継続する長期縦断研究のパネルの一部(2012年開始パネル)であり、2017年の調査は第9回調査にあたる。2012年のベースライン調査の協力者1450人のうち、代行調査の完了者(126人)、追跡拒否者(67人;2012年時に意思確認)、死亡(110人)、介護・療養型施設入所者(8人)を除く1139人が今回の訪問面接調査の対象となった。回収数は、対象者本人による回答は868(回収率76%)、家族等による代行調査(一部の項目のみ)を含めると920(81%)であった。 2 2012年調査データを用いた活動の類型化 2012年調査のデータを分析し、3種類の家庭内活動(家事、介護、孫の世話)と4種類の地域活動(ボランティア、グループ活動、趣味・稽古事、友人等との交流)の活動頻度を用いて潜在クラス分析により対象者を分類した。その結果、活動のタイプは、どの地域活動も活発な「高活動型」(24%)、グループ活動はしていないが趣味や友人等との交流はある「個人活動型」(34%)、グループ・ボランティア活動はしているが頻度が低い「低頻度活動型」(21%)、家庭内を含む全活動の参加率が低い「非活動型」(22%)に分かれた。就労状況との関連をみると、各活動タイプの割合は、非就労者では男女差はみられなかったが、就労している場合、女性では約半数が「個人活動型」で「非活動型」は非常に少ないのに対し、男性では「非活動型」が非就労者の場合と同程度の2割強を占めた。また、就労状況に関わらず、「高活動型」は「非活動型」に比べて、主観的ウェル・ビーイング(生活満足度など)が高い傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
追跡調査の回収率は良好であり、既存データの分析も予定通り実施したことから、全体的には順調に進んでいると言えるが、平成29年度に計画していた、調査対象者が居住する市区町村(約200自治体)の地域レベルのデータ作成が完了しなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
1 縦断データの構築とデータ解析による課題の検討 前年度に実施した第9回調査(2017)のデータのクリーニングを行い、第8回(2012)までのデータと統合して個人レベルの縦断データを作成する。地域レベルデータの作成も引き続き実施する。研究代表者と研究協力者は、これらのデータを共有し、各自の専門分野を生かしたデータ分析や論文執筆を行う。 具体的には、就労、地域活動、家庭内活動の3領域の活動について、1つの領域の活動変化、特に就労状況の変化(退職)が他の活動への参加にどのような影響を与えるか、活動変化の影響が、年齢や性別などの個人特性や、地域特性によりどのように異なるかを明らかにする。2012年開始パネルの2012年と2017年の2時点データの分析を主とするが、一部の課題については、第8回調査以前の縦断データの使用も検討する。また、地域・家庭内活動への参加状況による活動類型の2時点での推移やそれに関連する要因、就労と地域・家庭内活動への参加や活動類型が、健康や心理的なウェルビーイングに与える効果についての縦断的な分析も行う。 2 研究成果の公表 2012年の横断データの分析結果についての学会発表や論文発表を行い、2017年の追跡データを含む分析結果についても、学会・論文発表の準備を進める。また、2017年の第9回調査の結果についてのパンフレットを作成し、調査協力者への配布や調査ホームページでの公表を行う。
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