2017 Fiscal Year Annual Research Report
Mobility in Higher Education and Changes in Cost Sharing: Theory and Evidence
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17H02678
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松塚 ゆかり 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化センター, 教授 (80432061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 健輔 大正大学, 地域創生学部, 教授 (30443097)
佐藤 由利子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50323829)
米澤 彰純 東北大学, インスティテューショナル・リサーチ室, 教授 (70251428)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育経済学 / 高等教育財政 / 国際比較研究 / 留学 / 人材流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究目的は、マクロデータを用いて学生と高度人材の国家間移動と移動を規定する要因を分析することであり、課題中心的観点から理論、定量、定性研究を組み合わせて以下を遂行した。 1.理論研究: モビリティーを軸に、公共財政論、人的資本論、規模の経済性理論、国際流動化論、移民論等の基礎文献を収集・整理し、共用ドライブ上で研究メンバー間で共有するとともに、定量研究のための仮説を整えた。 2.定量研究: (1) 学生と高学歴者の国家間移動データをUNESCO:UISとOECD移民データベース(DB)等から、(2) 経済力、雇用、所得格差等の経済指標をWorld Development Indicators等から、(3) 就学歴、大卒収益率、高等教育費公私負担率等の教育指標をEducation at Glance等から収集、統合・加工した後、各国が提供するデータで補強し、高等教育をめぐるモビリティーとその規定要因を分析するためのデータベース(Database for Higher Education Mobility〈DHEM〉)を構築した。DHEMは研究メンバーの専門と関心を軸に複数にデータセット化し、専用ドライブで共有して分担分析した。さらに、平成30年度の計画研究である個票データの収集を試行し、DBの具体的設計を終えた。 3.定性研究: 平成30年度の米国現地調査に向けて上記の定量及び理論研究の成果を参考に、訪問候補の政府機関と大学の情報収集、調査プロトコールと質問項目の作成を進めた。 4.研究成果の公開: 全米比較国際学会でのパネル会議開催の申請が採択され、同学会で上記の理論研究、定量研究の成果を発表した。 発表件数: 7件、研究論文: 1件、図書: 1件
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論研究、定量研究、定性研究すべての分野において当初の計画通り研究を遂行した。Database for Higher Education Mobility (DHEM)の構築は想定以上の成果を生んだ。具体的には、研究分担者と密に協働し情報を共有することによって、特定できていなかった科学技術関係の変数(Science and Innovation Data, Total Factor Productivity)及び平成30年度の統合計画であったQS World University Rankingsを指標化して統合することができた。さらに当初は認識することができていなかったモビリティーに影響を与える要因である 1. 人口(全世界、1950年から2015年まで)、2. 貿易額(44カ国の輸出額 と輸入額、1988年から2017年)、3. 航空機の所要時間(44カ国から主要先進7国までの所要時間)、4. 言語(44カ国の使用言語(英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、その他)などのデータも入手し統合することに成功した。アジア地域について国際機関からデータを入手することが困難な場合は、国レベルのデータを独自に購入するなどして、データベースを充実させて分析を発展させた。DHEMは研究チームでデータの信頼性と有効性を確認した上で、一般に公開をする予定である。 DHEMを使用して行った統計分析は全米比較国際学会での発表を通して得られたコメントを活かし、また平成30年度5月に行う研究会で議論した後に学会誌へ投稿するべく準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、平成29年度のモビリティーとその規定要因に関する研究成果を活かしつつ教育費負担構造の変容を探る本研究の中心的調査・分析に入る。課題中心的観点から理論、定量、定性研究を組み合わせて以下の方法で研究を推進する。 1.理論研究: 平成29年度の成果である理論研究とマクロ定量分析の結果とを対応させ、モビリティーとその規定要因について理論と実証を繋ぐ研究成果を出す。モビリティーと教育費用負担に関する理論研究が進む欧米の研究協力者を交えて、国家間で運用できる教育費負担制度の理論的裏付けを分析する。 2.定量研究: 平成29年度に試行済みの研究者トラッキング用DBを本格的に構築し分析を開始する。分析は、欧州で同様のDBを作成・分析したルーヴァン・カトリック大学のReinhilde Veugelers教授と連絡を取り比較研究を念頭に進める。具体的には、2005年に米国で博士号を取得した外国籍研究者を対象に、(1) 学位修了者情報と(2) 学位修了者の経歴及び就学資金源等の情報を収集し統合の上、平成29年度作成のマクロデータと統合・分析する。分析は地域(国)、専攻分野、移動パターン等の枠組みで分けて、研究分担者(水田、佐藤、米沢)を中心に分担して詳細分析を行う。 3. 定性研究: 定性研究を専門とする国内外の研究協力者を交えて合衆国移民局、教育財務機関、奨学支援団体、大学を訪問して、モビリティーに対応する費用負担構造、制度、財政システム等に関する聞き取り調査を行う。現地調査で得られたデータは、定性分析ソフトに集積・加工して分析する。 4.上記の研究成果は北米で開催される国際学会で発表する。予算が許せば香港で開催予定の国際比較教育学会でアジア地域を中心とした研究成果を発表する。平成29年度及び30年度の成果をもとに論文を学術誌に投稿する。
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Research Products
(12 results)