2018 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症児の早期支援法JASPERの効果検証と社会性改善要因の検討
Project/Area Number |
17H02720
|
Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
黒田 美保 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (10536212)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 恵 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 講師 (00735079)
辻井 正次 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20257546)
井澗 知美 大正大学, 心理社会学部, 准教授 (70631026)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 幼児 / 早期介入 / JASPER / ADOS-2 / アイトラッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,心理士を中心にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された自閉スペクトラム症幼児療育方法であるJASPER日本版を実施し,効果検証を行った。(方法)参加者:介入群は病院や療育施設より紹介を受けた8名で,対象群は1つの療育施設に通う8名。手続き:介入群は,中京地区と関東地区の3施設で実施した。実施回数は週1回で20回,1回のセッションは,UCLAと同じく40~45分とした。対象群は,関東地区の施設で,従来からやっている構造化による療育を週1回20回行った。実施前に,子ども自身に,新版K式発達検査,ADOS-2(自閉症観察検査第2版)を実施。効果検証としては,子どもには,SPACE(Short Play and Communication Evaluation)および「心の理論課題」中のアイトラッキング(視線移動計測)を行った。SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査とアイトラッキングは介入前後のみである。保護者には,Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し,これらの変化を比較する。現在は,データを蓄積している段階であるが,JASPERを実施した介入群では,現在までに,要求行動・共同注意行動の改善と遊びの水準の向上が見られた。また,視線移動計測による自閉スペクトラム幼児の「心の理論」の理解については,両群を合わせた初期データを解析した。その結果,自閉スペクトラム児でも近親化課題では全員正解することができたが,「心の理論」課題では正答率は低下し個人差が大きくなった。同時に,SPACEの妥当性を調べるために,定型発達児10名についてSPACEとADOS-2を行い,現在解析中である。また,心理士のJASPERの実施スキルの向上のための勉強会を月1回実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,心理士を中心にJASPER日本版を実施する予定で研究を開始した。参加者はJASPER介入群を20名程度,対象群も同数予定していたが,半数程度の実施となり,引き続きデータを収集中である。JASPERの有効性を見ていくうえで,介入群と対照群は各20名程度で十分であると考えられるので,2018年度と2019年度のデータを合わせて結果を出していく。データ収集中であり,最終結果は述べられないが,いくつかの個別のケースについての詳細な分析を行ったところ,共同注意,要求の自発及び発した言葉に注目して分析すると,頻度が増加すると同時に,言語面では,介入初期より中期,後期になるにつれて,単語レベルだった子どもでも一語文やから二語文がみられるようになっていた。さらに,心理士への注目や相互性も向上した。また,JASPERの中で用いられるSPACE(Short Play and Communication Evaluation)の日本語版検査の妥当性と信頼性の研究においては,自閉スペクトラム症児16名,定型発達児10名のデータ収集を終了し,現在,データ整理を行っている。今後分析を行う予定である。また,JASPERやSPACEを実施できる心理士の養成のために,月1回の勉強会や施設を巡回しての指導を実施している。また,保育園への巡回も行い,保育士が実施するJASPERの指導や自治体全体の保育士向け勉強会も行った。勉強会の参加者32名に,JASPERやSPACEの効果への期待について質問紙による調査を行ったところ,自主研修会に参加しいている保育士ほど,子どもへの効果があると考えているという結果になった。現在,実施マニュアルを作成中であるが,こうした心理士や保育士の実践のなかで蓄積された,日本の実情にあったJASPERの実施方法を活かして作成を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
心理士によるJAPER実施の効果検証を行う。2018年度に引き続き,1年でJASPER介入群と対照群合わせて20名程度の子どもを予定している。中京地区と関東地区の4施設で実施する。実施回数は週1回で20回とする。1回のセッションは,UCLA大学と同じく40~45分とする。実施前に参加者の特性を詳細に調べるために,子ども自身に,新版K式発達検査,ADOS-2(自閉症診断観察検査第2版)を実施する。効果検証としては,子どもには,SPACE, 新版K式発達検査,および視線移動計測を行い,SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査と視線移動計測は介入前後のみである。保護者には,Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し,これらの変化を比較する。 2019年度前半に,保育士向けマニュアルを作成し,これを使って保育士がJASPERを実施できるかを検証していく。実施は,週1回,各回40~45分とする。JASPERを受けた子どもの対人コミュニケーション面に改善が見られたかの検証のために,子ども自身に,新版K式発達検査,SPACEを実施する。また,対人コミュニケーションの特徴を調べるために,最初にADOS-2(自閉症診断観察検査第2版)を実施する。また,保育士に対しては,実施方法を心理士がフェデリティチェックすると同時に,保育士の自己評価と実施しての感想をとり,マニュアルの精緻化を図る。
|
Research Products
(9 results)