2019 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症児の早期支援法JASPERの効果検証と社会性改善要因の検討
Project/Area Number |
17H02720
|
Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
黒田 美保 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (10536212)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 恵 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 講師 (00735079)
辻井 正次 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20257546)
井澗 知美 大正大学, 心理社会学部, 准教授 (70631026)
稲田 尚子 帝京大学, 文学部, 講師 (60466216)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 早期支援 / ジャスパー(JASPER) / 社会性 / 幼児 / 共同注意 / 保育所 / 遊び |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: 以下ASD)を中心とする社会性に躓きのある幼児への早期支援法の開発、特にコミュニティで実践できる方法の開発を目的としている。早期介入方法として、カルフォルニア大学で開発されたジャスパー(JASPER)プログラムの日本での効果検証やジャスパーが実施しているプリスクールでの実践を参考に、日本の保育所にあったプログラムを作成する。ASDの特性を考えると、早期介入は施設や医療機関で行われるより、保育所などのコミュ二ティで実施されることが望ましい。そのため、保育所や幼稚園での実施モデルを構築することも大きな目的である。また、介入の効果尺度にアイトラッキングという生物学的指標を加えながら、社会性の発達過程を明らかにする。 2019年度は、2018年度に引き続き心理士の実施によるジャスパープログラムの効果を検証するために、データ収集を行っている。対照群として、一般的な療育を受けているASD幼児について、2018年度から引き続き収集を行っている。また、保育士向けプログラムについては、2017年度・2018年度に保育所訪問して保育士を指導し、社会性に懸念のある子どもへの遊びを中心とした関わりプログラムを実施した。また、A市全体の保育士を対象にワークショップを行い、プログラムの概要を学んでもらった。これらの活動を通して、保育士向けの「遊びによる関わりプログラム」のマニュアルを作成中である。また、分担研究者が3ヶ月間カルフォルニア大学に留学し、詳しく実施法を学びプログラムの精緻化に寄与した。同時に,ジャスパーの中で行われるアセスメント(SPACE)について、ASD児と定型発達児のSPACEとADOS-2や発達検査の結果を解析し、SPACEの遊びのレベルがADOSの遊びのレベルや発達水準と相関することを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、2018年度に引き続き、心理士を中心に自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)の早期介入法であるジャスパー(JASPER)日本版を実施し、効果検証を行った。(方法)参加者:介入群は病院や療育施設より紹介を受けた5名で、対象群は1つの療育施設に通う9名。手続き:介入群は,中京地区と関東地区の2施設 で実施した。実施回数は週1回で20回、1回のセッションは、カルフォルニア大学と同じく40~45分とした。対象群は、関東地区の施設で従来から行っている構造化による療育を週1回20回行った。実施前に、子ども自身に、新版K式発達検査、ADOS-2(自閉症診断観察検査第2版)を実施。効果検証としては、子どもにはSPACE(Short Play and Communication Evaluation)および「心の理論課題」中のアイトラッキング(視線移動計測)、発達検査を行った。SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査とアイトラッキングは介入前後のみである。保護者には、Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し、これらの変化を比較 する。現在も、データを蓄積している段階であるが、個別のデータを分析するジャスパー(JASPER)を実施した介入群では、要求行動・共同注意行動の改善と遊びの水準の向上が見られた。同時に、SPACEの妥当性と信頼を検討した。前年度までの保育所での実施や保育士向け研修会をもとにジャスパープログラムを参考にした、社会性に躓きのある幼児への遊びによる関わりプログラムのマニュアルをほぼ完成した。ただ、1月末からの新型コロナウィルスの蔓延により、対照群のポスト評価及び保育士への研修などが中止となり、研究の一部に遅れが出ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、心理士が行うジャスパープログラムの効果検証のための実施を引き続き行う。分担研究者が、2019年10月より3ヶ月間、ジャスパープログラムの開発者であるカルフォルニア大学ロサンゼルス校のKasari教授の研究室に留学し、プログラムのトレーニングの参加し、入門コースを修了した。また、随時、研究室が運営するクリニックのセッションを見学したりコーチングを受けたりして、より精度の高いプログラム実施が可能となった。ジャスパーも実施資格ができたため、その資格取得も目指している。手続きは,2018年度と同様に中京地区と関東地区の2施設 で実施し、実施回数は週1回で20回,1回のセッションは40~45分とする。また、対照群については、2019年度の後半にポスト評価をする予定だったが、新型コロナウィルスの蔓延により延期になっている。これらの照群のデーターについては、7月くらいには収集したいと考え施設と調整中である。データが収集できれば、介入群との比較を通して、ジャスパープログラムの日本における効果検証を行い、学会発表・論文作成を積極的に行う。また、介入プログラム実施前後にアイトラッキングの課題を実施しているが、その変化を検討する。特に、アイトラッキングを測定する際に、幼児に実施可能な「心の理論」課題を使用しており、その能力の変化を通して、社会性の発達や発達に関わる機序について検討する。 保育士向けのプログラムについては、マニュアルを用いた研修を行い、それに基づいて保育所で実践を行ってもらい、その結果について調査を行う予定であった。しかし、新型コロナウィスルの影響で、対面の研修や子どもとの近い位置での介入指導が難しく、計画を一部変更し、昨年度に研修が終わっている自治体の保育所で各保育士によりプログラムをできる範囲で実施してもらい、子どもの変化を質問紙等で検討したいと考えている。
|
Research Products
(10 results)