2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of phase transition type high speed organic transistor and flexible information device application
Project/Area Number |
17H02760
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
工藤 一浩 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (10195456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 正俊 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60332219)
岡田 悠悟 千葉大学, 先進科学センター, 特任助教 (50756062)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 強相関 / 相転移型トランジスタ / 金属-絶縁体転移 / 有機エレクトロニクス / フレキシブルエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、強相関有機単結晶の金属-絶縁体転移を利用した新原理有機トランジスタを実現する研究を行ってきた。電荷秩序材料としてよく知られているα-(BEDT-TTF)2I3単結晶を、有機単結晶FET作製上の要求を満足する形状の単結晶として成長させ、さらに独自開発のラミネーションコンタクト電極を結晶表面に貼り付ける独自の手法によって、相転移型トランジスタの動作を実証してきた。平成30年度は、この独自手法をより幅広い有機単結晶に適用することによって、室温動作可能な相転移型FETを目指した研究を行った。室温動作の可能性が見込まれる有機電荷秩序材料として(BEDT-TTF)2PF6、モット絶縁体材料として(BEDT-TTF)(TCNQ)の、極薄かつ表面が分子レベルで平坦な板状単結晶の結晶成長を行った。結晶成長条件を絞り込んでいくために、昨年よりも大幅な結晶成長条件のモニタリングを行った。モニタリングした成長条件をフィードバックし、両材料に関して、針状結晶、短冊状結晶、板状結晶を得ることに成功した。なお、本年度に導入した原子間力顕微鏡によって、単結晶表面の平坦性評価、結晶厚や表面形状の正確な評価、ラミネーションコンタクト電極の接触および通電が単結晶表面に与える影響の評価が可能となった。これらの結晶の表面平坦性はまだばらつきが大きいため、単に結晶成長条件だけでなく、単結晶の採取条件なども含めて検討が必要と考えている。引き続き、室温で相転移動作が実現すれば相転移型FETの物理的な動作検証の推進も容易となるため、室温動作に関係する分光測定やホール効果測定などの基礎物性を共同研究によって推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、当研究資金で導入された原子間力顕微鏡の設置・稼働を行った。この原子間力顕微鏡はオープン構成仕様のため、ユーザーサイドでの改良を加えることが容易である。当原子間力顕微鏡の導入によって、単結晶表面の平坦性評価、結晶厚や表面形状の正確な評価、ラミネーションコンタクト電極の接触および通電が単結晶表面に与える影響の評価が可能となった。これらの評価は、これまでトライアンドエラーの要素が多くを占めていた結晶FET構造の作製や伝導性の評価において、確実性を増す効果がある。また、α-(BEDT-TTF)2I3に続く有望な材料として、(BEDT-TTF)2PF6と(BEDT-TTF)(TCNQ)の極薄単結晶の成長条件にとりくんだ。電荷秩序の典型物質として有名で多方面からの研究が既に行われているα-(BEDT-TTF)2I3と比べて、(BEDT-TTF)PF6や(BEDT-TTF)(TCNQ)は結晶成長に関するノウハウが少なく、ごく薄くて単結晶FETの結晶に適した成長条件を見出すことが容易でなかった。ひきつづき、結晶成長条件の改善を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
室温付近で金属-絶縁体転移を示すことが知られている電荷秩序材料(BEDT-TTF)2PF6とモット絶縁体(BEDT-TTF)(TCNQ)について、単結晶FET動作に適した結晶の成長条件を探索する。単結晶FETに必要な条件は、ごく薄く、それでいながら4端子電極が配置できる,程度の大きさをもち、さらには表面が分子レベルで平坦な単結晶が必要である。これをすべて満足する単結晶を得るのは容易ではなく、また、結晶成長には試行錯誤とノウハウの積み上げが必要である。ただ、α-(BEDT-TTF)2I3においては、従来正統とされていた条件よりも外れたところに良い成長条件が見出されたため、今年度の結晶成長条件も、常識的な成長条件にこだわることなく、スピーディーに、かつ、幅ひろく探索する。結晶の形状制御や表面平坦性の向上を図った上で、ラミネーションコンタクト電極の表面処理なども導入して、室温での相転移型デバイスの作製および特性改善をおこなっていく。室温動作が安定して得られれば、RFIDなどの実デバイスに対する応用・実装にもつながる。また、室温動作が実現すれば、相転移型FETの物理的な動作検証の推進も容易となる。これらの動作に関係する分光測定やホール効果測定などの基礎物性を共同研究によって推進する。
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