2018 Fiscal Year Annual Research Report
モデル縮減に基づく新世代高速構造保存数値計算法の創出
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17H02826
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 宇泰 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90293670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相島 健助 法政大学, 情報科学部, 准教授 (40609658)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代科学・工学では,微分方程式の数値計算に基づくシミュレーションが必須であるが,扱う問題が飛躍的に大規模化する一方,ムーアの法則の終焉により,並列(高性能) 計算のみに頼った性能向上は以前ほど望めなくなっている.本研究は,この状況を本質的に打開するために,数値解析学における最先端の2大トレンド,「構造保存数値解法:方程式の数理構造を活用することで物理的に適切な数値解を保証する手法」,および「モデル縮減法:大規模方程式を低次元近似することで数理的に計算量を削減する手法」を組み合わせ,数理的手法により,物理的に正しい数値シミュレーションを高速に行う,新しい数値計算法の枠組を創出することを目指す. 本研究課題はこれまでに以下の成果を得ている.まず非線形シュレディンガー方程式に対してSymplecticモデル縮減法を適用し,良好に動作することを確かめた.またカーン・ヒリヤド方程式など散逸型の方程式に対して,最新の(非構造保存的)モデル縮減法をいくつか実装し,それらの有効性をある程度確認した上で,構造保存的でないモデル減ではこれらの方程式のモデル縮減に限界があることを初めて明らかにした.以上の成果は,「構造保存的モデル縮減」という考え方がモデル縮減においては必須であり,その方向の研究が望まれることを改めて示すものである.また動的モード分解法について検証し,その新しい拡張を与え た.さらに,一般線形系に対するある種の乱択アルゴリズムについて,初めて理論的収束証明を与えた. さらに,これまで知られていなかった新しい構造保存解法として,ポアソン括弧・南部括弧に基づく離散化が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目指す構造保存的モデル縮減について,これまで,具体的に保存・散逸型偏微分方程式に対して,それらの構造を保存したモデル縮減技法の提案に成功し,実際の数値検証によって良い感触を得てきている.そのため,本研究課題は概ね順調に進展していると言える. さらに,その後の世界的な研究の発展に伴い,メッシュフリー法への対応,双曲型などモデル縮減が本質的に難しい問題への挑戦など,より挑戦的なトピックを採り入れつつ課題が大きく発展しつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
「進捗状況」で記したとおり,本研究課題は,世界的な研究の進展状況もあり,より挑戦的な課題設定へと飛躍しつつあるが,他方で今年度は,本研究課題の最終年度にあたるため,それら新しいトピックへの挑戦を続けつつも,本課題研究期間内に得られた知見を総合して,本課題における一定の結論を出すことが本年度の目標である. より具体的には,具体的な応用問題に対する現実的な規模設定における構造保存的モデル縮減の性能評価,および,本課題で提案された手法を含む各種構造保存的モデル縮減の理論的枠組の体系化を目指す.
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