2018 Fiscal Year Annual Research Report
Coherent photon-craft of functional nanostructure in glass
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17H03040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下間 靖彦 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40378807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 清貴 京都大学, 工学研究科, 教授 (60418762)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レーザー / ガラス / 結晶化 / 希土類元素 / 光学異方性 / 球面収差補正 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの実験から、ナノ周期構造は網目形成酸化物における酸素欠乏欠陥とO2で満たされた直径数nmのナノ空孔形成領域が周期的に配列した構造であることが判明している。一方、Na2OやK2O等のアルカリ金属酸化物を10 mol%以上含むボロシリケートガラス(BK7)やソーダライムガラスでは、ナノ周期構造の形成は確認できず、どのような材料特性がナノ周期構造形成に関与しているのかは未だ不明な点が多い。本年度は、(技術課題2)長期安定性の実現のため、(アプローチ③)光学塩基度を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の関係を体系化することを目指した。具体的には、ガラスの構造およびレーザー照射直後のガラスの粘度変化に着目し、粘度の温度依存性が異なる網目形成酸化物GeO2およびB2O3の2成分からなるガラスを作製し、ナノ周期構造形成におけるガラスの粘度とフェムト秒レーザーの照射条件の相関関係を明らかにした。B2O3の組成が75 mol%以上のガラスでは、ナノ周期構造は形成されないことから、一旦形成されたナノ空孔がレーザー照射直後の冷却過程で消滅したと仮定した。SiO4などの四面体を構造単位とする3Dネットワーク構造をとるガラスでは、粘性流動の活性化エネルギーが広い温度範囲でほぼ一定であり、またその値はSi-OまたはGe-Oの結合エネルギーとほぼ同じであるため、粘性流動が起こるためには、結合の切断が必要となる。このため、一旦形成されたナノ空孔がレーザー照射後も保持され、結果としてナノ周期構造が消滅せずに残ったと考えた。一方、2D状のユニットからなるネットワーク構造をとるB2O3ガラスの活性化エネルギーはSiO2ガラスに比べて小さく、また、B-Oの結合エネルギーに比べて非常に小さいため、結合の切断を伴わない層間でのすべりによる粘性流動の結果、形成されたナノ空孔が消滅したと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの長期安定保存が可能な超高密度光メモリを開発するため、記録ビットの書き込み技術に関する技術課題(長期安定性の実現)に対して、本年度は、(アプローチ③)光学塩基度を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の体系化を実施した。さらに、(アプローチ④)弾性率を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の体系化のために使用するIPA(Virtually imaged phased array)エタロンを用いたブリルアン散乱測定系を構築した。アプローチ③について、ガラスの構造およびレーザー照射直後のガラスの粘度変化に着目し、粘度の温度依存性が異なる網目形成酸化物GeO2およびB2O3の2成分からなるガラスを作製し、ナノ周期構造の形成の有無がガラスの構造とレーザー照射部近傍の温度変化による粘度変化が影響していることを明らかにした。さらに、構築したブリルアン散乱測定系により、石英ガラスについて測定し、ブリルアンシフトを求めた。その結果、石英ガラスでは32.67 GHzが得られ、文献値に対して約2 GHz程度低い値が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したガラス内部に光誘起した記録ビットの長期安定性を実現するため、以下のアプローチで課題解決を目指す。(アプローチ④)弾性率を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の体系化:ガラス内部に形成される偏光依存ナノ周期構造は、シリケートガラスの場合は酸素欠乏欠陥、希土類元素(RE = Dy, Tb, Gd, Eu等)を多量含むRE2O3-Al2O3ガラスの場合は相分離による部分結晶化、の2種類に大別できる。Cr添加シリケートガラスを含むシリケートガラスの場合、形成後のガラスを保持温度と保持時間を変えて熱処理することによって、酸素欠乏欠陥の緩和過程を評価する。保持温度および保持時間に対する複屈折由来の位相差のアレニウスプロットから、各種ガラス組成に対してナノ周期構造の長期安定性を評価する。特にCr添加シリケートガラスにおいて、保持温度および保持時間に対するCrの価数変化は吸収スペクトル測定やESR測定により評価する。一方、希土類元素を多量含むRE2O3-Al2O3ガラスは、保持温度および保持時間に対して部分結晶化領域がどのように変化するのかを高分解能TEMにより観察する。加えて、壊れにくいガラスへの応用を目指し、より充填密度の大きい構造を有する高弾性率ガラスに研究対象を拡げる。特にSrO-Al2O3、RE2O3-Al2O3 (RE = La, Y, Lu, Sc)等のガラスやこれらとSiO2を混合した3成分ガラスをガス浮遊レーザー溶融炉により合成し、相分離による部分的に結晶化した領域が周期的に配列した偏光依存ナノ周期構造の形成を試みる。
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