2019 Fiscal Year Annual Research Report
Control of monomer sequences by modification of vinyl polymers
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17H03069
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
右手 浩一 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (30176713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 朋広 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80314839)
押村 美幸 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (30596200)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポリ酢酸ビニル / ポリビニルアルコール / エステル交換反応 / 亜鉛アート錯体 / NMR / 動的光散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,高分子反応による酢酸ビニル(VAc)-ビニルアルコール(VOH)共重合体の連鎖制御と連鎖解析を重点検討課題とした。VAc-VOH共重合体は工業的に重要なポリマーであり,PVAcのメタノール溶液中,水酸化ナトリウムを触媒とするエステル交換反応により合成されている。この共重合体は,ブロック性の連鎖を有する。 1.PVAcの高分子反応による連鎖制御: 昨年度までの研究で,亜鉛アート錯体TBZL (Dilithium tetra-tert-butylzincate)がPVAcのエステル交換反応に対して優れた触媒活性を有するだけでなく,特徴ある連鎖構造のVAc-VOH共重合体を与えることがわかった。この反応機構を調べるためには,触媒活性種の化学構造に関する知見が必要であるが,NMRによるTBZL溶液の分析により,複雑な化学種の混合物であることが明らかになった。再結晶による単離精製も試みているが,現在まで成功していない。そこで,単結晶化が可能で,かつ,優れた触媒活性・連鎖特異性を有する新規亜鉛アート錯体の探索を行った。その結果,TBZLと同等あるいはそれ以上の活性と特異性を示す触媒2種を見出した。このうち1種は結晶化による分離精製が可能であり,NMRによる分析では単一化学種と考えられる。 2.VAc-VOH共重合体のNMRによるモノマー連鎖分布のキャラクタリゼーション: DMSO-d6を溶媒に用いるVAc-VOH共重合体のNMR測定では,試料溶液中に含まれる微量の水と,VOH単位による共鳴線がメチン基のスペクトル領域に重なるために,平均組成やモノマー3連子分布の測定精度が十分といえなかった。種々の条件を検討した結果,DMSO-d6に10%のD2Oを添加した溶媒を用いて90℃でNMR測定を行うことにより,平均組成とモノマー3連子分布の測定精度と再現性が大幅に改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VAc-VOH共重合体については,TBZLおよびその誘導体を触媒として用いることで,当初の予想以上に幅広い連鎖制御が可能であることが明らかになった。平成30年度に出願した国際特許の取得につながるなど,応用展開への可能性が開けてきた。昨年度は,複数の活性種が共存すると考えられるTBZLに代えて,取扱いが容易で単一活性種の亜鉛アート錯体2種の合成に成功している。単結晶としての単離精製と構造解析が可能になれば,学術・応用の両面から大きな発展が期待できる。 1H-NMRによるVAc-VOH共重合体のモノマー3連子解析では,VAc単位(A)とVOH単位(O)のそれぞれのメチン基による計6つの共鳴線(AAA, AAO = OAA, OAO, OOO, OAA = AAO, OAO)の積分強度比の決定精度が重要であり,従来はその精度と再現性が不十分であった。本年度の検討により,この定量精度と再現性が向上し,共重合体の連鎖特性と物性との相関や,触媒・反応条件による連鎖特性の変化について,十分な信頼性が得られるようになった。 これまで,ブロック性連鎖(従来法)とランダム性連鎖(TBZL法)のVAc-VOH共重合体が得られたが,交互性連鎖の共重合体は報告されていない。本年度,交互性連鎖のVAc-VOH共重合体の初期的検討を行った結果,これを実現しうる2つの合成経路を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子反応による連鎖制御と連鎖解析について,令和2年度は以下の2項目について重点的に検討する。 (1)亜鉛アート錯体を触媒に用いたエステル交換反応によるVAc-VOH共重合体の連鎖制御【担当:右手,平野,押村】 本年度までの研究によって,亜鉛アート錯体TBZL(Dilithium tetra-tert-butylzincate)がPVAcとアルコール,あるいは,PVOHとカルボン酸エステルとのエステル交換反応に対して優れた触媒活性を示すことが明らかになった。しかし,TBZLは複雑な化学種の混合物であるため,触媒活性種の構造や反応機構に関する研究が進んでいない。令和2年度は,TBZLをリード化合物として種々の亜鉛アート錯体を合成し,TBZLと同等以上の触媒活性・選択性を有する単一活性種(望ましくはX線結晶解析が可能な単結晶化)の単離をめざす。また,稀少資源であるリチウムをカリウム等の入手容易な金属に置換し,より安価で取扱いの容易な触媒を探索する。 (2)交互性連鎖を有するVAc-VOH共重合体の合成と生成ポリマーの特性解析【担当:右手】 ビニル基に電子求引性の置換基を導入したトリフルオロ酢酸ビニル(VTFAc)とVAcのラジカル共重合を行うと,交互性連鎖の共重合体が得られるものと期待される。生成した共重合体中のTFAcエステルを選択的に加水分解することにより,交互性連鎖のVAc-VOH共重合体の合成をめざす。これまで,交互性連鎖のVAc-VOH共重合体の合成例は報告されておらず,(1)の方法で得られる特異な連鎖の共重合体との物性比較を行ううえで有用と考えられる。単独重合性を示さないビニルエーテル類とVAcとのラジカル共重合と,得られた共重合体中のビニルエーテル単位の選択的水酸基化による交互性連鎖のVAc-VOH共重合体の合成についても検討する。
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Research Products
(12 results)