2017 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular design of hydrogen peroxide-dependent P450s
Project/Area Number |
17H03087
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 芳人 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10201245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酵素 / 触媒 / シトクロムP450 / 過酸化水素 / 鉄ポルフィリン錯体 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性中心に鉄ポルフィリン錯体(ヘム)有するシトクロムP450(P450)は,アルカンなどの不活性有機基質の水酸化反応を触媒することから,高難度水酸化反応への応用が期待されている.しかし,P450は一般的に高価な還元剤(NAD(P)H)が必要であり物質合成への適用はコスト的に見合わないと考えられてきた.本研究では,安価な過酸化水素を酸化剤とする強力な酸化酵素系を開発することにより,不活性有機基質を高効率に水酸化するとともに高い位置立体選択的反応が可能なバイオ触媒システムを開発することを研究目的としている.過酸化水素駆動型シトクロムP450であるP450SPaは、長鎖脂肪酸の水酸化酵素であり長鎖脂肪酸以外の基質に対する活性は著しく低い。長鎖脂肪酸のカルボキシル基が過酸化水素を用いる酸化活性種の生成反応において、プロトンの受け渡しを行う一般酸塩基触媒として機能するため、長鎖脂肪酸に対して高い選択制を示すことが明らかになっている。本研究では、過酸化水素駆動型P450によく保存されているヘム近傍のアルギニンをリジンに置換すると、長鎖脂肪酸以外の基質を酸化できるようになることを明らかにしている。P450SPaのR242K変異体は、スチレンなどの基質を酸化することができる。結晶構造解析によって、P450SPaのR242K変異体の活性部位の構造を明らかにすることにも成功している。この結晶構造解析より得られた情報を元に、更なる高活性化と反応機構解明に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過酸化水素駆動型P450のP450SPaとP450BSbのヘム近傍のアルギニンをリジンに置き換えた変異体によって、スチレンなどの酸素原子添加反応が進行することを明らかにするとともに、P450SPaについては、結晶構造解析に成功している。さらに、活性は弱いながらもベンゼンなどの芳香族環を直接に水酸化可能であることも見出しており、順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶構造解析には成功したが、ヘム近傍に配置したリジンがなぜ過酸化水素を利用する活性種生成反応を促進するのかが分かっていない。ヘム近傍のヘリックスが移動することで活性部位の空間サイズが小さくなっていることが一つの要因と考えているが、詳細は分かっていない。そこで、過酸化水素で処理した結晶の構造解析に取り組む。また、併せて、消化酵素による蛋白の断片化と質量分析により,リジン以外のアミノ酸が酸化されていないかなどを調べる。R241K変異体は、弱いながらもベンゼンを水酸化可能であることが分かってきたので、ベンゼンやトルエンなどの芳香族化合物の水酸化の反応条件の最適化を行う。
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Research Products
(4 results)