2018 Fiscal Year Annual Research Report
Improvement of vertical carrier mobility of organic semiconductor films and its application for organic devices
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17H03134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 健一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20324808)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 分子配向制御 / キャリア移動度 / 有機トランジスタ / 有機太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体薄膜における縦方向移動度を抜本的に向上させることを目的として、基板上の分子配向制御および三次元的な伝導を示す材料の探索を行っている。昨年度初めて作製に成功した、塗布プロセスから成膜できる還元型酸化グラフェン(rGO)層によるtemplate layerを用いて、さまざまな有機薄膜に対して適用し系統的な検証を行った。一般的にface-on配向しやすいことが知られているCuPcだけでなく、ヘリングボーン構造を取り二次元的な結晶構造を持つpentaceneやDNTTなどを用い、さらに配向評価として本年度はSPring-8での微小角入射X線回折測定も行い、精密に配向膜の構造を調べた。その結果、一般的にface-on配向の対象とはならないpentaceneやDNTTにおいても、部分的にヘリングボーン構造が横倒しになって縦方向に伝導パスができるような配向をとることが観察された。慎重に縦方向移動度を評価した結果、これらのヘリングボーン構造をとる化合物においても縦方向移動度の向上が観察された。 さらに、このようにして作製したrGOによるface-on配向膜を、CuPc/C60のヘテロ積層型の有機薄膜太陽電池に適用した。その結果、CuPcのface-on配向化に伴い、エネルギー変換効率は1.5倍程度に向上した。face-on配向の効果としては①縦方向のキャリア輸送の改善、②遷移双極子モーメントが寝ることによる吸収強度の増大、③励起子拡散長の増大、の3つの要因が考えられるが、三つの要因すべてにおいて改善が見られていることが分った。 また、縦方向移動度を評価するためのMIS-CELIV法の検討を引き続き行っている。本年度、ホール移動度については正確な移動度を評価するための測定条件を確立することができ、非常に高抵抗の樹脂分散膜まで評価することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では大きく分けて、①縦方向移動度向上のための分子配列制御方法、②縦方向高移動度に適した材料の探索、③縦方向移動度の測定手法、④縦方向高移動度を活かしたデバイス性能向上、の4つの柱を念頭に研究を行っている。①については塗布グラフェンtemplate layer層という強力な手法を編み出しほぼ達成している。③については、MIS-CELIV法が徐々に確立されてきて、ホール移動度に関してはほぼどのような材料でも評価できる目途が立った。④について、これまでは縦型メタルベース有機トランジスタへの適用例があるだけであったが、本年度は初めて有機薄膜太陽電池へと適用し、期待通りにキャリア輸送、吸収、励起子拡散のすべての面において効果があることが確認できた。②については、水素結合の面内ネットワークを使うことで界面との相互作用に関係なくface-on配向を実現する化合物を見つけており、次年度において新規化合物の合成も含めた新しい戦略に基づくface-on配向膜の作製に展開することになった。さらに、全く別の視点として、template layerのために作製したrGO膜が、MIS型の縦型有機トランジスタのソース電極として使えるという、新しいデバイスの可能性も見つけることができ、今後の検討項目が広がっている。 以上の状況より、(1)当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が確立した塗布rGO(還元型酸化グラフェン)膜のtemplate layerを用いて、有機半導体分子の晶系と分子配向と輸送特性、これら3つの間の関係を系統的に明らかにしていきたい。そのために、実験結果をサポートする、電荷カップリング計算や、近年手法の改良が進んでいる分子間力を評価する手法を投入して、分子の凝集構造を形成するドライビングフォースと半導体特性(キャリア輸送特性)との関係を系統的に明らかにしていきたい。さらに、ここまでのアプローチとは異なる、水素結合ネットーワークを用い、基板との相互作用によらないface-on配向の可能性を新たに検討し、それに適した材料の探索を新規化合物の合成も含めて検討する。さらに、本年度その兆候を見つけた、rGOをソース電極とするMIS型縦型有機トランジスタの可能性を検討し、「ソース電極と分子配向を誘起する機能」の両方の機能をrGOが担う、新しいタイプの縦型有機トランジスタへと展開することで、まだまだ研究例の少ない縦型有機トランジスタの性能向上をねらっていく。
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