2017 Fiscal Year Annual Research Report
超高圧縮応力を内包した金属基圧電複合材料の機能発現メカニズム解明
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17H03141
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
浅沼 博 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40167888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 史生 東北大学, 工学研究科, 教授 (10312604)
佐藤 宏司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70344166)
柳迫 徹郎 工学院大学, 工学部, 助教 (80784628)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機械材料・材料力学 / 構造・機能材料 / 複合材料・物性 / センサ・アクチュエータ / 知的材料・構造システム |
Outline of Annual Research Achievements |
金属コア圧電ファイバ/アルミニウム複合材料(Piezo-Al)は,複合化時に生じる極めて高い残留圧縮応力下においても圧電性を発揮する他に類を見ない圧電複合材料であるが,この圧縮応力下での機能発現に関して不明な点も多い.当該年度では,この機能発現メカニズム解明のため,下記の項目を実施・検討した. 1)Piezo-Al中の圧電ファイバは複合化時に圧縮熱残留応力が負荷される.この圧縮応力が圧電ファイバの分極にどのような影響を与えているかを検討するため,分極状態の評価を検討した.Piezo-Alは円筒型コンデンサ形状をしており,従来の圧電材料分極評価手法では正確な評価ができない.このため,ペレット状の材料物性値を計測し,その値を有限要素解析モデルに入力することで放射状の分極状態における分極状態の評価に目途をつけた. 2)複合化された圧電ファイバは圧縮応力により破断強度が向上する可能性が示唆されている.この圧縮応力による機械的特性向上を評価するため複雑な構造を持つPiezo-Alではなく,単純構造を持つ圧電セラミックス/アルミニウム複合材料を作製し,3点曲げ試験により圧電セラミックスの強度を確認した.この結果,複合化前の約1.4倍まで強度が向上していることが確認できた.しかしながら試行回数が少ないこと,マトリックスに塑性変形が生じ破断応力の評価が難しいことなどから,より詳細な評価を行う必要がある. 3)圧縮応力以外にもPiezo-Alの特性に大きな影響を与える因子として,金属コアの偏心や圧電ファイバ周辺への共晶合金の残留が確認されている.これらの影響を分極軸が放射状であることを考慮したモデルを作成し,有限要素解析により評価した.その結果,コアの偏心による影響は,最大で約20%程度であり,共晶合金の残留による圧電ファイバ-マトリックス間の応力伝達阻害が大きな影響を占めることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高圧縮応力下における圧電機能発揮のメカニズム解明の基本となる,本複合材料特有の形状からくる分極および圧電定数の評価に関してペレット状の圧電材料の物性値をリファレンスとし,各物性値および構造を考慮したFEMに入力することで分極評価の目途をつけた.また,機械的特性に及ぼす評価として,より単純なモデル材料として圧電セラミックス/アルミニウム複合材料を作製し,その強度を評価している.また,金属コアの偏心や共晶合金の残留に関してもFEMによる解析および実験値との比較から,残留共晶合金が出力に及ぼす影響が大きいことを確認している.
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Strategy for Future Research Activity |
1)超高圧縮応力下での圧電ファイバ分極のメカニズム解明 分極メカニズム解明のために,この残留応力下でのPiezo-Alの分極状態を評価する必要があるが,Piezo-Alでは分極軸が放射状となるため,コア付近と外周部では分極状態が異なり,従来手法では正当な評価ができない.このため,Piezo-Alを焼鈍することで,圧縮応力を変化させ,その際の共振―反共振の位相差やP-Eヒステリシスループの変化を把握する.加えて,リファレンスとして,PZTペレットに単軸圧縮応力下で分極処理を施し,各種パラメータを比較することで,Piezo-Alの特異な電極構造や静水圧的な残留応力の影響を評価する.併せてこれらのデータを解析にフィードバックし,Piezo-Alにおける分極状態の評価手法を確立する. 2)圧縮応力が圧電セラミックスの機械的特性向上におよぼす影響の評価 金属中に複合化された圧電セラミックスの機械的特性向上の影響を正確に評価するため,圧電ファイバではなくPZT焼結体を金属中に複合化し,その強度を3点曲げおよび引張試験にて評価する.この試験中に複合化したPZTの破断を検知するためAE法を用い,高精度に破断応力,破断伸びを測定する.また,PZT焼結体単体の機械的評価を行い,複合化前後でのワイブルプロットの変化からばらつきを含めたうえでの機械的特性向上を評価する.
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