2018 Fiscal Year Annual Research Report
中性子ハイブリット回折が拓く現場利用バルク金属残留応力計測技術の開拓
Project/Area Number |
17H03161
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大竹 淑恵 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (50216777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高村 正人 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00525595)
鈴木 裕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, リーダー (10373242)
熊谷 正芳 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (20582498)
徐 平光 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (80554667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中性子回折 / 小型中性子源 / 角度分散法 / 残留応力 / バルク金属 / シリコン単結晶 / モノクロメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
小型中性子源RANSを用いた角度分散法によるバルク金属格子面間距離測定を実現するために、前年度に製作したSi単結晶を用いたモノクロメータの改良に取り組んだ。Si単結晶は、400面回折が得られるよう、100面を表面の面方位とする板状形状とし、長手方向200mm、幅方向15mm、板厚0.7mmの15枚重ねとなっているが、これらの位置決め精度の向上、および設置時の作業性を考慮し、位置決め用の爪を備えた固定治具とした。これにより、100με程度のモザイク及び、集光のための横方向及び縦方向の曲率を容易に設定できるようにした。一方、前年度に実施した回折実験のデータ解析を進め、今後の高度化のためにビーム発散角の抑制及びバックグラウンドノイズの低減が極めて重要な課題であるとの考察結果を得た。 飛行時間法による回折においては、オイラークレードルの活用による散乱ベクトル方向設定の自動化やバックグラウンドノイズ遮蔽の強化を進め、IF鋼サンプル(15mm×15mm×15mm)の集合組織(結晶方位の3次元分布)を、J-Parc「匠」などに匹敵する高い精度で計測することに成功した。この過程において、測定データ解析の際の検出器有感面の最適な分割、結晶構造同定のためのリートベルト法の適用など、小型中性子源による回折プロファイル解析に不可欠ないくつかの知見を獲得することができた。 飛行時間法中性子回折を応力測定に適用するためには、上記集合組織測定とは異なり、回折で得られる情報のエネルギー分解能を格段に向上させる必要があり、そのためには中性子パルス幅の低減が必要である。これを実現するための陽子パルスの要件、ポリエチレンモデレータの寸法や構造(非結合型にするなど)の検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標であった、モノクロメータの構想及び設計製作、モノクロメータを用いた単色ビーム集光、金属サンプルを用いた角度分散回折の実現が達成できた。しかし、得られた回折ピークの統計精度、S/N比、格子面間隔分解能はまだ不十分であり、かつ、残留応力とその測定誤差の定量的評価には至っていない。 一方で、飛行時間法による中性子回折については、IF鋼の集合組織測定実験のデータ解析が完了し、エネルギー分解能がさらに高くなるモデレータの構想につながった。 以上により、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
飛行時間法による中性子回折においては、エネルギー分解能向上を狙った非結合型モデレータを設計、製作し、BCC鉄サンプルを用いた回折実験を行う。その際、モデレータの厚さや陽子パルス幅も実験パラメータとして変化させ、得られる回折ピークの幅(FWHM等)への影響を系統的かつ定量的に分析する。また、得られたピークのフィッティング手法及びエネルギー分解能評価手法についても検討する。 角度分散法においては、平成30年度に得られた回折実験結果の解析を進め、その格子面間距離測定分解能を定量的に評価する。その評価結果を用いて、さらに最適なビームコリメ―ション及びバックグラウンドノイズ遮蔽を検討する。
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