2017 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal of in-situ observation method for solidified elastohydrodynamic films
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17H03166
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
八木 和行 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50349841)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トライボロジー / 固化 / レオロジー / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では,まず前半に静的条件における潤滑油の状態図の作成を行った.静的条件における高圧環境は,現在研究室で所有しているダイヤモンドアンビルセル装置により作り出した.高圧下での潤滑油の分子構造分析方法については,大学の共同利用設備であるRaman分光装置を用いた.脂肪族アルコールである1-dodecanolやアルカンといった結晶化を起こす低粘度試薬の場合について,Ramanスペクトルおよび可視像の変化から液相および固相領域を推定し,状態図の作成を行った.年度後半には,既存のEHL実験装置を用いて,光干渉法による油膜厚さの測定を行った.低粘度試薬を用いた場合の特異油膜形状出現条件において実験を行った.低粘度潤滑油のうち,脂肪族アルコールを用いた条件においては,すでに数多くの知見を有しているが,アルカンや塩などの脂肪族アルコール以外のさまざまな試薬を用いて実験を行った.その結果,脂肪族アルコールのほかにも潤滑油の固化が原因とみられる油膜形状変化が起こることが明らかとなったが,他の試薬では,脂肪族アルコールよりも低粘度,高融点であるため,高温度,高速条件といった厳しい条件を設定する必要があり,脂肪族アルコールが最も運転条件が緩やかな条件であることがわかった.そして,FT-IR装置が納品された後には,静的条件において低粘度潤滑油の吸光度の測定を行った.その結果,動的実験条件のような薄膜においても,短い測定時間で問題ない吸光度を測定できることを確認した.一方,FT-IR装置を用いて半値幅から粘度を予測できないか,試行してみたが,高圧化で明確な半値幅の変化をとらえることができず,平成29年度内ではFT-IR装置を用いた粘度測定を行うことができなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた静的条件での低粘度油の状態図作成を問題なく終えることができた.一方,FT-IR装置の選定にあたって,複数の候補機種の性能評価を行ったため,納品が予定よりも遅れることとなった.しかし,納品後に静的条件において十分な性能評価を行うことができたため,問題が生じることはなかった.FT-IR装置を用いた粘度の測定については,測定できなかったが,新規の測定方法として試行することを目的としていたため,研究計画に影響はないものである.平成30年度においても試行を継続する予定である.その一方で,トラクション油を用いた動的条件での油膜厚さ測定を行うことができなかった.この理由は,FT-IRの機種選定に時間を要したこと,低粘度油の油膜厚さの測定数が多かったことが原因であるが,当初の計画では低粘度油の固化膜発生現象を調べることが優先であるため,大きな遅延にはなっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は,FT-IR測定装置に組み込む専用の実験装置を購入して実験を行う.実験条件は,すべり転がり条件実現可能なものにする予定であるが,ディスク材料にはサファイアだけでなく,より赤外透過波長域が広いフッ化カルシウムも用いる予定である.FT-IR測定装置を用いた実験では,一点のみの測定だけはなく,潤滑面入口部から出口部にまでかけて多点計測を行い,潤滑油が潤滑面に入っていく中でどのあたりで固化が起こっているのかを明らかにしていく. 潤滑油については,アルコールだけでなく,ガラス転移を起こすと考えられているトラクション油を用いた実験も今後行う.また,運転条件については,常温だけでなく,低温環境下での固化膜のその場観察も平成31年度以降に行っていく予定である.
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