2018 Fiscal Year Annual Research Report
医療検体の高品位常温乾燥保存を目指した保存操作の設計と検体劣化の予測
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17H03182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80292754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トレハロース / 再結晶 / 酵素活性 / ガラス化 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌等の疾患の早期発見や個別化医療の実現には,臨床検査で血液等の検体中の遺伝子情報の解読やバイオマーカーであるタンパク質(酵素)の活性の定量測定が不可欠である.しかしながら,これらの生体分子は,体外に摘出すると極めて速やかに劣化が進む上に,凍結保存では劣化の抑制が不完全で手間もかかることから,臨床検査の医療現場では臨床検体の「質」の維持が重大な問題となっている.本研究では,臨床検体中に存在する生体分子の活性を維持した常温乾燥保存の保存機序を明らかにし,保存プロセスの設計の指針を確立することを目的としている.本年度は, 1)初年度に引き続き,赤外分光顕微鏡を用いて,保護物質であるPLLの広範囲の(過飽和)高濃度水溶液中の水の拡散係数を測定.また,これらの過飽和高濃度水溶液中の水の水素結合水比を計測. 2)トレハロースとボロンの質量比を変えてガラス転移曲線を測定 3)トレハロースとボロンまたはPLLの混合保護物質を添加したLDHの乾燥後の活性評価 をおこなった. 1)より,PLL水溶液中の水の拡散係数は,乾燥が進むと,同じ含水率のトレハロースに比べて高いことがわかった.このことは,PLLをトレハロース水溶液に添加することで,乾燥過程における蒸発を促進できることを示差している.また,PLL+トレハロースが最も乾燥保護効果が高く,乾燥直後の活性を80%以上維持することができることがわかった.これらの結果とガラス転移曲線の結果を比較することで,常温においてガラス状態にある含水率を維持するだけでは,高い活性が維持できないこともわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度で,当初に計画した測定をほぼこなすことができているため.また,進捗上で懸案であった検体モデル試料として適切な試料を選択することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,劣化の緩和時間を測定するが,本年度の結果を踏まえて,保存状態(温度と湿度)を一定に保った実験をする必要がある.
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