2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of triboelectric generation for molecular electronics as dielectric phenomena by using optical method
Project/Area Number |
17H03230
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田口 大 東京工業大学, 工学院, 助教 (00531873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間中 孝彰 東京工業大学, 工学院, 教授 (20323800)
岩本 光正 東京工業大学, 教育・国際連携本部, 特任教授 (40143664)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 誘電体物性 / 可視化 / マイクロ・ナノデバイス / 低消費電力・高エネルギー密度 / ナノマシン電子工学 / 非線形光学 / 電子デバイス・機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
摩擦電気は物と物を擦り合わせることで電気が発生する現象として広く知られています。摩擦により発生する電気は、いろいろな製品を製造するときに問題を引き起こすので、摩擦しても電気を発生しない工夫や、発生した電気を逃がしてしまうようにする手法がとられてきました。一方で、近年では摩擦電気を電池の代わりにエネルギー源として利用することもできるようになってきています。摩擦電気をエネルギー源として利用するには、摩擦から多くの電気を発生させるための研究が必要です。ところが摩擦電気が発生する仕組みは良くわかっているとはいえません。それは、電気が目に見えず、材料のどのような性質が摩擦したときに電気を生みだすのかを研究する手段が限られているからです。 本研究では、SHG測定が摩擦電気のミクロな起源(「電荷」と「双極子」)を可視化できる方法であることを実験により実証しました。そして、材料表面の電荷と双極子が、ものとものを擦り合せたときにどのように発生するのかを動画撮影できるようになりました。ポリイミド、ポリエチレンなどの摩擦電気を光学的に撮影できます。ポリイミド(PMDA-ODA)ではレーザー波長1140 nm(SHG波長570 nm)で電荷を、レーザー波長570 nm(SHG波長285 nm)で双極子を可視化できます。また、パルスレーザーによる時間分解測定系を構築し、ミリ秒よりも早い摩擦電気の発生過程を測定することにも成功しました。これらの成果をさらに発展させて、摩擦により発生する電荷と双極子、それらの間の関係を明らかにするために研究を進めています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、非線形光学手法であるEFISHG測定による摩擦電気発生のミクロ起源(「電荷」と「双極子」)を特定して可視化する手法を実現する。これにより、エネルギー源としての摩擦発電を利用した、静電気分子エレクトロニクスのための新しい材料評価基盤を実現する。本年度は申請時の計画に従い、下記の成果を得た。 (A)摩擦電気の起源の特定:ポリイミドの電荷と双極子を特定して可視化するレーザー波長でSHG測定を実施した。さらに、ポリエチレンの電荷測定波長も決定することに成功した。熱刺激電流測定とSHG測定を同時に行うことができる測定系を新たに構築し、摩擦電気のエネルギー準位と空間分布を同時に測定できるように測定系の拡張を行った。 (B)摩擦電気発生ダイナミクスの解明(時間発展):摩擦帯電の時間分解測定を行う測定系を構築した。パルスレーザーの繰り返し周期(0.1s又は1ms)で制約されたSHG測定の時間分解能の限界を克服し、パルスレーザー幅(4ns又は80fs)まで時間分解能を上げることが原理的に可能である。現在の測定システムでは摩擦を行うためのピエゾステージの応答速度の制約からマイクロ秒の時間分解能で制限されている。 (C)摩擦電気の電荷と双極子の相互作用:ポリイミド表面を摩擦すると双極子が配向して負電荷が表面に発生する。SHG測定で電荷を選択的に可視化した画像と双極子を選択的に可視化した画像を比較し、その相互作用を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、非線形光学測定であるEFISHG測定を摩擦電気の新しい測定手法として実現する。これにより従来の静電的測定方法の限界を克服して摩擦電気の「電荷」と「双極子」を選択的に可視化する新技術とし、静電気分子エレクトロニクスのための材料評価基盤を確立する。これまでに、光学的手法の特徴を活かして、「電荷」と「双極子」の可視化、動画撮影、時間分解測定を実現し、静電的測定方法とは異なる観点から摩擦電気に迫る実験手法を確立できた。この成果を受けて、今後の推進方策を下記の通りとして研究をさらに発展させる。 1.摩擦電気の電荷と双極子の相互作用の明確化:測定手法としての研究は当初計画した項目は実現できたことから、摩擦電気発生過程を「電荷」と「双極子」を選択的に可視化し、その間の相互作用を実験の立場から明確化する。EFISHG測定可能な摩擦電気発生材料は本課題ではポリイミドとポリエチレンを特定した。この2つの材料の摩擦電気発生過程の「電荷」と「双極子」を可視化して電荷と双極子の間の相互作用を明確化する。 2.摩擦電気発電過程のその場観察:前年度までにEFISHG時間分解測定を実現し、ミリ秒よりも高速の電荷発生と双極子配向過程を可視化できる状態にある。従来の静電的手法では制約のあった摩擦電気発生過程を実験で明確化する。 3.摩擦の定量化:ラビングマシンを構築し、摩擦量を定量化して議論できるようにする。 以上の推進方針で研究を実施し、成果の統括を行う。
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