2017 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間中の電気インピーダンス測定によるウイルスセンシング法の創成
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17H03246
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 貴富喜 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20322688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノボア / ナノフルイディクス / ウイルス / バクテリア / 微少電流計測 / 微細加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
電極間隔がナノスケールになると,電極反応に伴う様々な副作用を抑制しつつ,MV/m以上もの高電界を利用したナノ空間特有の電気測定系の実現が可能となる。本研究では,ナノ空間の高電界中で得られる非線形な電気インピーダンス計測を利用して,ウイルスやバクテリアなどのバイオナノ粒子を単一粒子レベルでセンシングする新手法の創成を目的としている。 今年度は測定デバイスの作製法の開発に着手し,単一のバイオナノ粒子サイズの開口断面積に相当する,断面サイズが数100nmから数μmのナノボアを有する測定デバイスの開発に成功した。作製に当たっては,有限要素法によるシミュレーションで電界設計の上,厚さ数μmの薄膜ガラス板に収束イオンビーム加工装置で穴を空けることにより作製した。本デバイスは,薄膜に由来する高い測定精度・感度と,透明性に由来する光学顕微鏡下での動作観察を両立したものとなっている。さらに,当初計画していたこれまでのドライエッチングにもとづく作製プロセスを大幅に簡略することが可能となり,将来的に産業応用に展開した際に必要となる,短納期・低コスト化でもメリットが得られる作製方法となっている。 本デバイスで実際にナノ粒子を通過させて電流計測を行ったところ,ウイルスやバクテリアのサイズとなる数100nmから数μmの範囲のナノ粒子を計測できることが実証され,インフルエンザウイルス,バキュロウイルス,Qβウイルスなどの様々なウイルスの単一粒子計測に成功し,その粒径分布とゼータ電位を元にウイルス種のカテゴライズが可能となることを明らかとした。本手法により,ウイルス粒子の物性値計測からウイルスの同定をする手法への足がかりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初年度の予定通り,測定デバイスの作製法の開発に着手し,新たに薄膜ガラス基板に対して収束イオンビーム加工装置で穴を空けることにより,これまでの作製プロセスを大幅に簡略したプロセスでデバイス作製が可能となり,短期・低コストで作製する手法の開発に成功した。当初はデバイスに測定電極を組み込むところまでを計画していたが,全く新しいデバイス作製法を発案すると共にその開発が予想外に上手く進んだため電極作製に関しては遅れ気味であるが,新たに得られた作製法は電極構造の作り込みも容易化されると予想されるため,デバイス作製に関しては概ね順調に進展している。 また,平行して進めることを計画していたウイルス粒子の計測に関しては,インフルエンザウイルス,バキュロウイルス,Qβウイルスなどの様々なウイルスの単一粒子計測に成功し,その粒径分布とゼータ電位を元にウイルス種のカテゴライズが可能となることを明らかとした。本手法により,ウイルス粒子の物性値計測からウイルスの同定をする手法への足がかりが得られ,こちらも順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) インピーダンス応答からのウイルスやバクテリアの同定能の評価を進める。抵抗率や誘電率と共にインピーダンススペクトルの特徴を上手く抽出すると,共雑物の混在下でも種類毎にクラスター化してウイルスを同定できることがこれまでの実験で明らかになりつつあるので,ウイルスやバクテリアなどのバイオナノ粒子の数理モデルからインピーダンスデータの解析,あるいは機械学習なども利用した解析などによりインピーダンススペクトルから最適なパラメーターを自動抽出してバイオナノ粒子を同定する解析法の開発に着手する。 2) H29年度に開発した新しいデバイス作製法の確立を目指す。特に,デバイスへの電極パターン形成と,各コンポーネントを接合してシステムとして実現するための作製法の開発を進める。 3) インピーダンス測定に用いる電極を利用すれば,単に計測だけで無く,例えば電気パルスに細胞破砕や誘電泳動などによる新たなバイオナノ粒子の操作も可能となる気づきを得たので,本来の計画を進めると共に,新手法に対しても検討を進める。
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Research Products
(7 results)