2018 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間中の電気インピーダンス測定によるウイルスセンシング法の創成
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17H03246
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 貴富喜 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20322688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 1分子計測 / ウイルスセンシング / ナノ流体システム / Bio-NEMS / 1分子操作 / マイクロ化学システム / 電気インピーダンス計測 / 超微小電流計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,研究計画の通り,昨年度までに開発した測定用ナノ電極を埋め込んだ断面サイズが数10μmから数100nmのナノ流路を有する測定デバイスで様々なウイルス粒子の測定を行った。一方,更なる小さなバイオナノ粒子計測への展開を図るため,DNAをサンプルとして生体分子の1分子計測にも挑戦し,ウイルス粒子と合わせて測定能の評価を行った。 具体的には,蛍光顕微鏡で可視化しながらナノ流路にウイルス懸濁液を流し,ウイルス粒子が電極を横切る際の電気インピーダンス応答から,単一ウイルス粒子測定の電気インピーダンス計測を行った。ウイルスとしては,Qβファージ,GAファージ,バキュロ,タバコモザイク,インフルエンザを用い,電気インピーダンス値のウイルス種依存性を評価した。その結果,まだ,単一ウイルス粒子かどうかの判定は難しいものの,少なくとも単一ウイルス粒子レベルの極微量ウイルスのインピーダンス計測に成功し,かつ,ウイルス種毎に異なる電気インピーダンススペクトルを得ることに成功した。この結果より,電気インピーダンススペクトルを取得し,そこからウイルスの抵抗率,誘電率,サイズやゼータ電位を得てウイルス種の同定を単一ウイルス粒子レベルで実現できる可能性を見いだした。 一方,単一の生体分子測定に関しては,分子サイズが100 bp, 5 kbp, 48.5 kbpのDNAを用いて評価した。その結果,測定装置の性能も影響しているものの,現状のセットアップにおいて5 kbp以上のDNAに関しては単一分子レベルで測定できることを明らかとした。100 bpに関しては,現状で約30分子数程度(12.5 pM相当)であれば計測できることも明らかとした。以上,インピーダンス計測によりDNA分子を単一分子レベルで計測可能であることを明らかとし,論文として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はH31年度に予定していた様々な種類のウイルス粒子の計測をH30年度に実施し,それによってウイルス種に応じたインピーダンスシグナルが得られることの実証に成功したこと。および,研究計画には含まれてなかったものの,ウイルスより更に小さいバイオナノ粒子として,生体分子であるDNAの単一分子計測にも成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度の研究においてウイルス種に応じたインピーダンス値を得ることに成功したので,当初計画通り,インピーダンス値からウイルスを同定するに当たってインピーダンスに含まれるどのパラメーター(抵抗,キャパシタンスなど)を評価すればウイルス種の見分けがつくのかを評価する。具体的には,ウイルスを電気的等価回路でモデリングの上,各等価回路の構成要素へ帰属を解析する。ただし,構成要素に分解せずにインピーダンススペクトル全体で評価する方法の検討も進める。 さらに,等価回路の検討と平行して,インピーダンス応答とウイルスの構造との因果関係の解明に取り組み,得られた知見を元に本手法におけるウイルス同定の精度や感度を明らかにする。 DNAを例とした生体分子の単一分子計測に関しては,可視化のために用いてる蛍光色素のインピーダンスへの影響を評価し,さらなる高感度化と高精度を進める。特に,本手法の特徴である高電界印加時の誘電泳動力による立体構造変化とインビーダンスとの関係を明らかとし,立体構造とインピーダンスとの関係を明らかにする。
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Research Products
(8 results)