2017 Fiscal Year Annual Research Report
熱赤外域分光リモートセンシングによる都市空間の気温分布の逆推定手法の構築
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17H03353
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
淺輪 貴史 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50361796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 秀樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, ユニットリーダー代理 (10392961)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リモートセンシング / 熱赤外分光放射計 / 気温分布 / 逆推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究手法に関する定式化を理論的・実験的に行った。具体的には、気温分布の逆推定手法の数学的定式化と熱赤外域分光センサの利用可能性の理論的・実験的検討に関する課題に取り組んだ。 まず、衛星リモートセンシング分野で用いられている気温分布や大気濃度分布の逆推定手法を調査し、都市大気の水平気温分布推定に適用する方法を理論的に検討した。特に、パスの終点が既知の温度(放射率)の物体である場合と大気の無限遠である場合とで、定式化がどのように異なるのかを示した。これらは、建築空間でパスが短く、且つパスの終点が壁面等である場合と、都市大気を対象として比較的遠距離のパスに適用する場合との違いに相当する。 次に、熱赤外域分光センサを利用して、上記で定式化した逆推定手法を都市大気の気温分布逆推定に適用した場合に、どの程度の精度が得られるのか、また課題点は何かを実験的に検討した。実験は7月に東京都多摩市で実施した。4階建物の最上階から、500m遠方と2.7km遠方の森林までの区間を対象に熱赤外域分光センサによる観測を実施した。同時に、パスの終点が大気の無限遠である場合についても観測を実施した。パス間を4層に分割して気温分布の逆推定を行った結果、いずれのパスにおいても第1層目から誤差が大きく気温の過小推定が起こっていた。第2層目以降では、MAP法による事前分布に近い結果が得られており、実際の大気からの温度情報の寄与が小さい結果となった。 上記の点について放射伝達モデルを用いて数値実験的に検討を行った。放射伝達モデルでは、実験のような誤差は生じなかったこと、また実験においてはいずれのパスにおいても同様の誤差傾向を示していることから、今回の実験に含まれるバイアスの原因であると考察した。これらは、実験と数値解析の両方を用いて、今後要因の感度分析を行って行く必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の予定通りに進行した。都市大気を対象とした実験において、当初の想定や数値解析の結果よりも誤差が大きい結果となったが、これは研究の第一段階として実施したもののため、想定の範囲内である。むしろ、研究計画段階では具体化できていなかった課題部分が明確となり、次年度の研究の方向性が具体的に定まったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度の研究によって明らかとなった実験上現れる誤差について、その要因を具体的に特定してゆく。具体的には、逆推定で用いるMAP法において誤差の鋭敏性について理論的に検討をするとともに、解の安定化手法を検討する。また、都市大気を対象として実験条件を変更した実験の実施と、大気放射伝達モデルを用いた数値実験による感度分析を行ってゆく。これらは、おおむね当初の計画通りである。
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