2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本建築和室の世界遺産的価値に関する建築学的総合研究
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17H03360
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 秀一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (00199853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 盟児 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20249973)
稲葉 信子 筑波大学, 芸術系, 教授 (20356273)
高田 光雄 京都美術工芸大学, 工芸学部, 教授 (30127097)
内田 青蔵 神奈川大学, 工学部, 教授 (30277686)
服部 岑生 千葉大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (40009527)
亀井 靖子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (50386083)
岡 絵理子 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (60346187)
小澤 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
藤井 恵介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 名誉教授 (50156816)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和室 / 文化遺産 / 住宅 / 日本建築 / 生活文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)和室の仕組み・構成と世界遺産としての意味に関して、本年度は、無形の文化価値の意味として、住宅についての言説や言語化されない価値観に潜んでいる文化価値を扱ったが、本年度の成果の一つとして、心理学的な研究方法SD法による和室の価値観を明らかにしたことが挙げられる。また、鴨長明の方丈記を中心に、後世に継承される和室の素朴な様子と自然の暮らしの信条が伝統化(無形の価値化)したことを確認し、他方でホアン・ロドリゲスの教会史等により、茶の湯を楽しむ人は、孤独の哲人を模倣することを信条とすること、茶の湯のために人里を離れた場所に小屋を作ったなどの実態を確認した。また、東南アジアにおける床座の伝統の存在に関する既往の研究成果を確認する中で、和室の特異性の一つが意匠にあることを確認した。これは次の(2)に繋がる。(2)和室の建築文化・生活文化および生産上の歴史と位置付けに関しては、主に、和室の内部空間に関する調査研究を行った。近世の和室の内部意匠を調べ、そこで把握されたインテリアの序列性や意味を、中世から、および近代と数寄屋意匠から検討し、その結果をとりまとめた。インテリアが示す和室の性質については、屏風等も含めた可動的オーナメントの問題も含めて、歴史的にどのように変化して現代的状況に至るか、その原理は何かなどの課題があることを確認した。(3)市民生活とわたしたちの住宅での和室の位置付けと将来に関しては、現代の住宅生産者に対する聞き取り調査等により和室の減少傾向と和室の設計施工体制の確認を行った。(4)社会に対する研究成果の公開による世界遺産認証の活動の基盤形成に関しては、昨年度に引き続きユネスコ世界遺産条約・無形文化遺産条約など国際的枠組みの整理を行うとともに、和室が現在でも作られている台湾においてその実態調査と国際シンポジウムの企画・開催を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに大きな区分で3つの研究グループが立ち上がり、それぞれの目的に沿って、着実に研究が実施された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に以下の体制で研究を推進し、その成果をとりまとめる。 (1)和室の仕組み・構成と世界遺産としての意味については、「和室の統合的価値研究WG」が担う。有形文化としての和室の特異性の解明に関しては藤田、松村が主に担当。無形文化としての和室の特異性の解明に関しては服部、内田が主に担当。 (2)和室の建築文化・生活文化および生産上の歴史と位置付けについては、「和室の史的展開研究WG」が担う。和室の核になる空間構成要素の成立過程の解明に関しては藤田が主に担当。和室の継承・変容の歴史的な過程の解明に関しては小沢が主に担当。東アジア諸国との関係の解明に関しては稲葉が主に担当。 (3)市民生活とわたしたちの住宅での和室の位置付けと将来については、「現代社会における和室研究WG」が担う。和室の衰退の過程の解明に関しては高田、岡、服部が主に担当。既存ストック活用事例、モダニズム以降建築作品事例での和室再評価・継承の解明に関しては内田、亀井が主に担当。和室大工等技能者を育成する仕組みの提示に関しては松村が主に担当。(4)社会に対する研究成果の公開による世界遺産認証の活動の基盤形成については、「和室の統合的価値研究WG」が担う。ユネスコ世界遺産条約・無形文化遺産条約など国際的枠組みの整理を引き続き稲葉、松村が主に担当。
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Research Products
(3 results)