2018 Fiscal Year Annual Research Report
ナノドメインエンジニアリングによる高Tcかつ高d定数ビスマス系圧電材料の創生
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17H03389
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
和田 智志 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60240545)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BT-BMT-BF系セラミックス / 圧電材料 / ナノドメインエンジニアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度はBNT-BT-BMT-BF系セラミックスを通常固相法を用いて作製する際に、出発原料を変化させ、出発原料による欠陥濃度の変化とそれによる圧電特性について検討した。その結果、作製した目的組成のセラミックスの圧電特性が出発原料に大きく依存することを見出した。その上で出発原料の最適化を行なった結果、Biを含むペロブスカイト構造粒子とBiを含まないペロブスカイト構造粒子を別途作製し、それを反応焼結させることで焼成後のグレインサイズを大きくでき、圧電特性を向上させることを見出した。更に種々の化学組成を持つBNT-BT-BMT-BF系セラミックスを通常固相法を用いて作製し、その結晶構造評価、微構造評価に加え、圧電特性評価により、最適な化学組成を決定した。まず、20組成を選択し、通常固相法を用いて作製し、その結晶構造評価、微構造評価に加え、圧電特性評価を行った結果、11BNT-23BT-2BMT-64BF組成近傍において疑立方晶系の結晶構造であるにも関わらず、明確な強誘電特性を示し、かつ大きな圧電性を確認することができた。そこでこの化学組成を中心に組成探索を更に実施した結果、BNT組成を減少させ、その代わりにBF組成を増加させることで、結晶構造が疑立方晶構造から菱面体晶構造へ徐々に変化することを確認できた。それに伴い圧電特性も大きく変化し、疑立方晶構造と菱面体晶構造の共存領域において高い誘電・圧電特性が得られることがわかり、本研究において最大の圧電特性を持つ化学組成を11BNT-23BT-2BMT-64BFに決定した。続いて、この決定した化学組成において、焼結条件(温度、時間)の最適化、測定試料作製時の加工歪み除去のためのアニール条件の最適化(温度、時間)などを行った結果、誘電・圧電特性を更に向上できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度の最大の課題はBNT-BT-BMT-BF系セラミックスにおいて、圧電特性が最大となる化学組成の探索であったが、前述したようにこの組成を見いだすことができた。従って、大きな研究スケジュールの遅れはないと考えている。圧電特性については、本研究でも目標値である1200pC/Nには届いていないものの、電気分極や電気歪みの測定温度を室温から200℃まで増大させることで目標値を達成できることが明らかとなった。このことはセラミックス内部に外部電場による電気分極反転を阻害する欠陥構造の存在を示唆しており、今後ドメインピニング減少のための欠陥構造抑制が鍵となる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度はH30年度に決定した化学組成において、欠陥構造制御を行い、ドメインピニングサイトとなる欠陥濃度を大きく減少させることで、目標値である1200pC/Nとなる圧電特性の実現を目指す。本研究で作製するBNT-BT-BMT-BFセラミックスは揮発性のBiやNaを含み、かつ価数の異なる4+、3+、2+の状態を持つFeなどを含んでいるため欠陥構造が推測され、そのためBiやNaの高温処理での揮発の抑制、更にはBiやNa揮発における酸素(O)空孔の生成に伴うFeの価数変化が容易に起こると考えられる。従って、揮発元素の揮発抑制のための密閉系るつぼでの焼結に加え、揮発抑制のためのドーパントの選択と添加などが必要となる。また、スパークプラズマ焼結法などの焼結手法を導入することで、焼結温度の低温化にも取り組む必要がある。
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Research Products
(4 results)