2017 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of oxide-nitride gradient structure to enhance energy conversion efficiency of photoelectrode
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17H03427
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
西川 雅美 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (20622393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 哲男 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究センター長 (80357524)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化物 / 低温結晶化 / 光電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光と水から水素を製造できる光電極のエネルギー変換効率の向上には、伝導帯と価電子帯のポテンシャル勾配を光電極の内部に形成させることが重要と考える。急なポテンシャル勾配の形成には、伝導帯と価電子帯のポテンシャルの差が大きい酸化物と窒化物の複合が有効である。本研究の目的は、酸化物の上に、酸化物の特性を変えることなく、窒化物を複合可能とする窒化物の低温結晶化プロセスを開発することである。 初年度は、窒化物の低温結晶化を実現するために、①エキシマレーザー照射法と窒素プラズマ法の融合プロセスを構築した。具体的には、室温・窒素プラズマ雰囲気内において、有機金属の前駆体膜にKrFレーザー(波長248 nm)を照射可能なシステムを組んだ。次に、②窒化物として窒化タンタルを選定し、有機タンタルの前駆体膜を本手法により窒化物に結晶化を行った。調べたパラメーターは、エキシマレーザーのレーザーフルエンス、照射パルス数、窒素プラズマ密度(窒素流量)である。X線光電子分光法およびグロー放電発光分光法により、得られた薄膜には窒素が含まれていることを確認した。窒素の含有量は、上記パラメーター全てが影響し、エキシマレーザーの照射条件(レーザーフルエンス、照射パルス数)は極値を持つことを明らかにした。また、本システムに組み込んだ窒素プラズマ装置は、電極間で窒素プラズマ中の励起種を加速させる反応性イオンエッチングモードのため、前駆体膜に効率よく窒素種が供給される一方で、エッチングの競争反応が起こることがわかった。そのため、窒素励起種の密度と得られた薄膜中の窒素含有量に比例関係は見られず、良質な窒化物膜を得るためには、窒素流量を制御し、薄膜へのエッチングレートを下げることが重要であった。 以上の通り、窒化物の低温結晶化に向け、本プロセスの有効性および課題を十分に認識できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の計画通り、先ず①エキシマレーザー照射法と窒素プラズマ法を融合した窒化物の低温結晶化プロセスを構築し、次に②窒化物として窒化タンタルを選定し、有機タンタルの前駆体膜を本手法により窒化物への結晶化を実施した。X線光電子分光法とグロー放電発光分光法により、得られた薄膜には、窒素が含有していることを明らかにした。このことから、本研究課題の目的である窒化物の低温結晶化に向け、「窒素プラズマ雰囲気中において、有機前駆体膜にエキシマレーザーを照射する」本手法は、計画当初の方針の通り、有効であると判断した。また、各プロセス因子(レーザーフルエンス、照射パルス数、窒素プラズマ密度)が、窒素含有量に与える影響について系統的に調べた。各因子が窒素含有量に影響を与え、其々の因子の最適値は、他の別の因子の条件変更によって変動することがわかったため、本プロセスの窒化最適条件に関しては、今後より詳細に調べていく必要がある。また、本プロセスに組み込んだ窒素プラズマ装置は、電極間で窒素プラズマ中の励起種を加速させる反応性イオンエッチングモードで行っているため、前駆体膜の結晶化とエッチングの競争反応が起こることがわかった。そのため、レーザー照射時の繰り返し周波数を上げて、短時間で結晶化させる必要性を認識した。 以上の通り、本年度において、窒化物の低温結晶化に向け、本プロセスの有効性および課題について十分に把握できたため、次年度以降も概ね計画通りに進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず、①初年度に確立したエキシマレーザー照射法と窒素プラズマ法の融合プロセスにおいて、窒化最適条件(レーザーフルエンス、照射パルス数、繰り返すショット数、窒素プラズマ密度)について、より詳細に、系統的に調べて行く。そして、本課題の目的である「下地の酸化物の特性を変えない(つまり、窒化させない)で、窒化物へと結晶化させる」ためには、得られた薄膜について、深さ方向の窒素イオンの分布を評価していくことが必要である。そのため、X線光電子分光法およびグロー放電発光分光法により、深さ方向への窒素イオン分布も併せて評価していく。また、表面形態、結晶状態等、電界放出走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、薄膜X線回折装置により、多角的な評価を実施する。 最適条件を見出した後、②酸化物上へ窒化物の複合化を実施する。具体的には、得られた知見を基に、本手法により、酸化タングステン膜の上に、窒化タンタルを積層させる。そして、窒化タンタルの積層プロセス時、下層の酸化タングステンの特性を変えない(窒化させない)ことが重要であるため、酸化タングステンの変化(窒化量、還元の程度)をX線光電子分光法およびグロー放電発光分光法により評価する。また、透過型電子顕微鏡により、酸化物と窒化物の界面での元素の拡散の程度を調べる。これらの評価とプロセス条件見直しを繰返し行うことで、本手法を、単に低温で窒化物を結晶化可能なだけでなく、下地の材料(酸化物)の特性を変えずに、窒化物を複合化可能な手法へと進化させる。
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Research Products
(7 results)