2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sulferization of oxides and electrochemical reduction in molten salt
Project/Area Number |
17H03434
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 亮輔 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80179275)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 金属生産工学 / 製造プロセス / 溶融塩 / 硫化物 / 金属粉末 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)「酸化物を硫化物へ高速に安価に硫化する方法の開発」 炭素と硫黄ガスの組み合わせ、もしくは二硫化炭素液体からの気化ガス、を高温の酸化物に作用させたところ、酸化チタン、窒化チタン、イルメナイト、酸化ネオジム、酸化スカンジウムはいずれも硫化物に転換出来た。ガス流量や時間によらず温度が大きく寄与する。これは、CS2ガスの熱分解が熱力学的平衡状態に有ることを示し、硫化物の化学量論組成からのずれとも対応した。とりわけ、窒化チタンは炭素汚染の懸念のある二硫化炭素ガスではなく、イオウ単体を揮発させて硫化が可能で、高純度金属製造法として大いに幅を広げた。 (2)「硫化物を金属に還元する溶融塩電解還元の基礎調査」 固体硫化物の金属Caによる還元に成功した他、その還元反応を溶融塩中でも同様に生じさせることに成功した。(a)作製した硫化チタンを還元し、イオウをほぼ完全に除去した金属チタンを得た。 (b)硫化バナジウムの電解還元に取り組み、低硫黄濃度の純バナジウム金属粉末の製造に成功した。とくにCaCl2-LiCl共晶の組成で還元を試み、反応温度を250℃も低下させた。これは反応時の消費熱エネルギーを低下させる。(c)酸化物が極めて安定なネオジムとスカンジウムの硫化物をCa還元により、それぞれの金属合金を得た。合金から生成する方法を模索している。(d)比較的低温で作用する溶融塩で、硫化ビスマスおよび硫化鉛の還元を準備しCa還元を実証した。続いて電解還元の準備にかかっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は探索的な研究であるが、得られた成果は期待した以上のものとなった。すなわち、酸化チタンの硫化に成功し、極めて不純物酸素と硫黄の少ないチタン粉末を得た。さらにチタン鉱石であるイルメナイト鉱の硫化にも成功した。窒化チタン、炭化チタンも硫化出来たことは望外で有り、従来法に優る新製錬法提案に至る成果である。しかも窒化チタンはイオウのみで硫化できることも判明し、硫化物を経ることで高純度金属チタンが製造できる。 硫化バナジウムおよび硫化チタンの電解還元は予定通り順調に成果を上げている。さらに、LiClを含有させて600℃以下の溶融塩が利用できることが分かった。酸化ネオジム、酸化スカンジウムの硫化に成功し、これらの金属合金を製造することに成功した。 これらの成果を3年間に国際会議で7回発表することができ、硫化物製錬の効果を世界にアピール出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
得られた硫化チタン、硫化スカンジウムの純度向上を行う。硫黄濃度、炭素濃度分析は当方で開発した手法と装置で対応する。酸素との親和力の強いスカンジウム、ネオジム、イットリウムで酸化物を硫化し、しかる後還元する試みを行う。これらIII族元素は熱力学上、酸化物は極めて安定で、強い還元剤であるCaを用いても還元できず、フッ素を用いてフッ化物の還元が必要であった。本研究ではフッ化物に転換するのではなく、硫化物に転換するので、環境問題の解決のみならず、我が国のイオウ資源の有効利用となりうる。 スカンジウム金属の我が国における生産例はなく、また本法はネオジム磁石のリサイクルの基幹技術になりそうである。この分野で我が国がリーダーシップを取れる様に研究を強力に牽引する。
|