2018 Fiscal Year Annual Research Report
Physics, Mathematics and chemistry about control of dynamics in biomimetic and cell-mimetic membrane
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17H03467
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00183434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リポソーム / 相分離 / 生体模倣膜 / 数理モデル / シミュレーション / 生理活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究概要】現在、我々は、各種生理活性物質(温感、冷感、ビタミン、各種カチオン、コレステロール、界面活性剤等)と生体モデル膜(細胞サイズリポソーム)との相互作用を解析し、その2次元(膜相分離構造)、3次元(膜構造)ダイナミクスを画像解析などの手法により詳細に解析し、生理応答と分子レベルでの膜相互作用について、考察を行っている。また、結果をもとに、数理モデルを作成し、さらには類似の機能を有する物質を化学合成する研究に取り組んでいる。 【研究例:トコフェロールと膜相分離】(背景)現在、生体モデル膜と、各種生理活性物質との相互作用、相互作用による膜ダイナミクス(膜相分離構造、膜形態)の変化について、研究を行っている。ビタミンEはトコフェロール(toc)、トコトリエノール(toc3)の2つに分類されている。いずれも、食品に多く含まれる物質であり、抗酸化作用をもつことで知られている。tocは小胞体ストレスの関わる神経細胞死を抑制するが、toc3では抑制しない。このような機能の違いが生じる原因は明らかになっていない。生体膜はリン脂質を主成分とした二重膜構造であり、生体反応の場として重要である。小胞体膜はコレステロールをほとんど含まないため、細胞膜での相分離と違い、秩序固体相 (solid-ordered(So) phase: 飽和脂質に富む)が出現する。そこでビタミンEが膜相分離構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的にしている。(結果)ビタミンEによりSo domainの形成が阻害されること、特に、tocはtoc3よりも大きく阻害することを明らかにした。一方、ビタミンEを加えても液体相分離構造の形成率(Lo、Ld domain)には変化がみられなかった。ドメインの界面に揺らぎが観察されたため、ビタミンEは液体相分離構造の形成に重要な線張力を低下させていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種生理活性物質と膜相互作用を検討し、学会発表や論文発表も、積極的に行っている。これまで細胞膜を中心に研究を行ってきたが、現在は、小胞体膜など、細胞小器官をイメージした膜構造、さらには酸化コレステロールや脂質過酸化物など、老化をイメージしたモデル膜の作成にも取り組み、一定の成果が挙がっている。数理モデルは、結果を理解し、分子レベルでの相互作用をイメージするのに役立ち、共同研究レベルでは、膜結合物質の化学合成、機能解析も結果が出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り、生体模倣膜を中心に、生物学のみならず、物理、化学、数学など多角的に膜ダイナミクスについて、研究を続ける。これまでは、疎水、親水性の相互作用にのみ着目していたが、3年目には、膜電位、そして荷電物質(金属イオン、ポリアミン等)と荷電脂質との相互作用が起こすダイナミクスを解析していきたい(一部、実施中)。さらに共同研究者とも密接に連携して、膜結合物質を種々合成し、すでに成功しているイオンチャネルだけでない、機能性の化合物のデザイン、合成、機能解析も進めていきたい。
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Research Products
(25 results)