2018 Fiscal Year Annual Research Report
Is genetic diversity needed for species survival? Genomic analysis of a "long-lived heavy smoker"
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17H03629
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
高橋 洋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (90399650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 直彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (50399664)
田上 英明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (40601084)
中山 耕至 京都大学, 農学研究科, 助教 (50324661)
武島 弘彦 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (50573086)
橋口 康之 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70436517)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保全生物 / 遺伝的多様性 / 保全遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
種内の遺伝的多様性は,生物多様性の基本的な構成要素の一つであり,種が環境の変化に応じて存続するために必要であると考えられている。ところが,種全体の遺伝的多様性が脊椎動物中最も低いレベルであるにもかかわらず,長期間存続してきた魚類の一種“アカメ”が発見された。本研究は,ゲノム分析と高精度の人口統計学的解析を組み合わせて,アカメが遺伝的多様性を失ったにもかかわらず,運良く絶滅を免れてきた“長生きのヘビースモーカー”なのか,それともそのゲノムに長期間の存続を可能にした得意なメカニズムが隠されているのかを解明し,遺伝的多様性は種の存続に必要かという,進化生物学や保全遺伝学における本質的問いに光を当てようとするものである。本年度は,昨年度得られた高品質なアカメゲノムDNAを用いて,アカメの主要な分布域である宮崎県と高知県からそれぞれ1個体についてde novoで高品質なゲノムシーケンスを得ることができた。これらのゲノムシーケンスから,アカメが既に全ゲノムデータが得られている魚類の間で最も低い遺伝的多様性しかもたないことをゲノムワイドに確認した。加えて,PSMCなどの人口統計学的手法により約15万年前からのアカメの集団サイズの変遷を推定したところ,本種の集団サイズは期間全体と通じて極めて小さく,また最終氷期以降に数分の一以下に縮小したことが示された。このことから,長期間小集団であり続けたことが,本種の極めて低い遺伝的多様性の主な要因であると明らかにすることができた。今後は,宮崎県と高知県で採集されたアカメについて,数個体のリシーケンスを行い,ゲノム構造解析を進めることにより,極めて低い遺伝的多様性しかもたないにもかかわらず,長期間存続し得たメカニズムにせまる。また,アカメ当歳魚の定量的DNA試料に基づき,血縁推定などにより現在の有効繁殖集団サイズを推定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り,本年度中にアカメ2個体の高品質なゲノムシーケンスを得ることができ,これらのデータに基づきゲノムワイドに遺伝的多様性の低さを確認し,人口統計学的解析手法を用いた解析,ならびにRNAseqデータなどを合わせたゲノム構造解析に進んでいる。また,遅れていた当歳魚の集団遺伝学的解析についても,宮崎県と高知県で調査場所のリサーチが順調に進み,当初のサンプリングデザイン通りのDNA試料の採集ができている。また,得られた定量的DNA試料に基づき,血縁推定に基づく繁殖集団サイズ,ならびに詳細に集団構造についての定性的データも得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
宮崎県と高知県からそれぞれ数個体について,各個体30x以上のデプスでリシーケンスデータが得られているので,昨年度得られたアカメ2個体分の高品質なゲノムシーケンスデータをリファレンスにして,詳細なゲノム構造解析を進める予定である。具体的には,複数個体のゲノムデータから過去の集団サイズの変遷を推定するMSMC分析や,RNAseqデータに基づく遺伝子予測および外群(アカメモドキとバラマンディを予定)との比較によるゲノム構造分析を行う。また,宮崎県と高知県で行われたアカメ当歳魚の定量的DNA試料採集に基づき,マイクロサテライト分析とRAD-seq分析に基づく血縁推定,ならびに詳細な集団構造推定を行う。これらの分析結果に基づき,アカメの現在の有効繁殖集団サイズや,地域間の遺伝子流動を推定し,過去の集団サイズとの比較や,詳細な集団構造の推定を通じて,実効性のある保全策につながるデータを得る。
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Research Products
(10 results)