2017 Fiscal Year Annual Research Report
複製ヘリカーゼ導入を軸とした複製開始機構と複製開始制御システムの分子機構の解明
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17H03656
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 勉 九州大学, 薬学研究院, 教授 (70264059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 細菌 / 遺伝子 / 分子機械 / AAA+ファミリー / DNA複製開始 / 高次複合体 / 試験管内再構成系 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌の複製開始複合体は、複製起点oriC DNA、開始因子DnaA蛋白質多量体、DnaA集合促進因子DiaA蛋白質、DNA屈曲因子IHF蛋白質から成る。この複合体では2重鎖DNAの局所的1本鎖化と複製へリカーゼDnaBの1本鎖DNAへの導入が起こる。本研究計画の[1] 「複製起点へのDnaBヘリカーゼの導入の分子機構の解明」においては、開始複合体における高次で動的な蛋白質の相互作用機構とその制御機構を中心に解析する。さらに [2] 「DnaA制御システムにおける適時的な機能制御の分子機構の解明」では、DnaA蛋白質の活性を制御するDnaA高次複合体の分子動態とその制御機構を中心に解析する。平成29年度は以下のような進展があった。 [1] 複製起点へのDnaBヘリカーゼの導入の分子機構の解明 DnaBヘリカーゼ導入に必要となる、複製起点DNAとDnaAとの相互作用機構を詳細に解析した。特に1本鎖DNAとDnaAとの相互作用の分子機構を解明して論文発表した。さらにDnaA-DnaBの相互作用に重要な新たな機能構造を探索するため変異体を作成して解析し、その成果を学会で報告した。またDnaAとDiaAとの相互作用解析のため必要となる、新たな実験システムを構築した。さらに、DnaAと共通するAAA+ドメインをもつ酵母菌ORC(複製起点認識複合体)の変異体を多数作成して機能解析し、その成果を学会で報告した。 [2] DnaA制御システムにおける、適時的な機能制御の分子機構の解明 DnaA蛋白質の活性を制御する非コードDNA因子DARSやdatAで形成されるDnaA高次複合体を解析するため、新たに開発していた独特のDNA配列に結合するキメラDnaAをこれらのDNA因子に適用して複合体の活性を解析した。また、これらのDNA因子に適時的に結合するIHF蛋白質の制御因子の探索を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[1] 「複製起点へのDnaBヘリカーゼの導入の分子機構の解明」においては、複製起点DNAにおいて1本鎖DNA領域を形成させる分子機構が詳細に明らかとなり、国際的に高く評価されるジャーナルに論文が掲載された。また、この成果を軸にして、さらにDnaA制御システム解明における最近の進展の説明を加えた、新たな総説を執筆して国際ジャーナルに発表した。これらに加えてDnaA-DnaB相互作用機構の解明に必要となる機能構造解析でも重要な結果が得られた。 [2] 「DnaA制御システムにおける、適時的な機能制御の分子機構の解明」においては、特にDARS系においてキメラDnaAが有効に活用できることがわかった。これによりDARS系で形成されるDnaA高次複合体の分子動態の解明が格段に進展することが期待される。 このように3年計画の初年度においてすでに重要な結果が複数得られており、その一部の成果は論文発表も行い、さらに広い範囲から成果を評価して総説も発表したため、上記のように総合的に評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
全体的には順調に進行しているため今後も計画に従って研究を進展させる。上記のように予想以上に速く進展した部分もあるが、開始複合体におけるDiaA動態を制御する未知因子やDnaA制御システムにおける未知の制御因子の解明については特にチャレンジングな課題となっており、初年度は想定どおりの探索段階の状況にある。これらについても結果の一部は学会や研究会で報告し討論しながら進めており、現時点で研究計画の変更までは必要ないが、今後もより注意深く研究過程を分析しながら慎重に遂行してゆく必要がある。
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