2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H03665
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
昆 隆英 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30332620)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 細胞内物質輸送 / 構造生物学 / 分子モーター |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイニンは,ATP加水分解を利用して微小管上を滑り運動する巨大なモータータンパク質複合体で,そのモーター活性は,細胞中心方向への物質輸送・細胞移動・細胞分裂など本質的な生命活動の駆動に必須である。しかし,これら多様な細胞内機能を発揮するための基盤となる「ダイニン複合体が微小管上を輸送運動するメカニズム」はいまだに謎に包まれており,その解明は生物物理学・細胞生物学分野の重要な研究課題のひとつである。 本研究課題は,ダイニン複合体の機能面での解析を進めるとともに,構造面での研究を強力に推進することで,その運動発生機構の全貌を原子レベルで明らかにすることを最終目標としている。 本年度の研究では,細胞中心方向への輸送機構を理解する上で最も基本となる「単量体ダイニン分子が微小管に強く結合している構造」をクライオ電子顕微鏡解析するための諸条件の検討に注力した。具体的には,まず,ネガティブ染色電子顕微鏡法による評価を行いつつ,単量体ダイニン,微小管および,単量体ダイニン-微小管複合体についてタンパク質サンプル調製法の最適化を行った。次に,大阪大学超高圧電顕センターの電子直接検出型クライオ電子顕微鏡(Titan Krios/Falcon-II)を用いて,サンプルグリッド作成法の最適化とクライオ電顕像撮影条件の最適化を行い,予備的なクライオ電子顕微鏡像を取得した。さらに,得られた電顕像について,標準的な画像解析ソフトウエアSPIDER およびSPHIREを用いて,予備的な二次元および三次元の単粒子解析を行った。得られた予備解析の結果は,従来得られていたもの (Mizuno 2007 PNAS) よりも高品位のものであり,本研究が進展すればダイニン運動発生機構理解への新たな知見が得られるものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では,従来用いていたCCD検出型クライオ電子顕微鏡から近年劇的な進歩を遂げている電子直接検出型クライオ電子顕微鏡へと使用機材を移行しつつ研究を進めているが,撮影条件の最適化に予想以上の時間を要したため,研究進捗が多少遅れている状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,「微小管に強結合状態にあるダイニンMDの構造を明らかにする」プロジェクトを進めるとともに,「微小管上を輸送運動しているダイニン複合体の構造を明らかにする」プロジェクト」の検討を開始し,細胞中心方向輸送機構の構造基盤解明を目指す。
|
Research Products
(6 results)