2017 Fiscal Year Annual Research Report
Peroxisome biogenesis and human disorders
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17H03675
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤木 幸夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任教授 (70261237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 茂彦 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90236753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / 膜形成 / PEX遺伝子 / 神経形成障害 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下のA)およびB)の項目について研究を推進した。 A) ペルオキシソーム膜形成の分子機構の解明 ペルオキシソームに局在する新たなテイルアンカータンパク質としてミトコンドリアに局在するMitochondrial Rho GTPase-1(Miro1)のバリアントを同定し、膜貫通部から40アミノ酸程度N-末端部に位置するバリアントに特有なPex19p認識配列依存的なペルオキシソーム局在化機構を見出した。また、エーテルリン脂質プラスマローゲンの生合成を担い小胞体とペルオキシソームに局在するN-末アンカーⅠ型膜タンパク質は、膜貫通部を含むN-末端領域へのPex19pの結合依存的にペルオキシソームへと輸送されることも見出した。これらの成果は、リボソーム上で翻訳中の新生タンパク質とPex19pの結合によるペルオキシソームへの輸送機構の存在を示唆するものである。また、サイトゾルにおいてPex19pと複合体を形成したペルオキシソーム膜タンパク質輸送中間体に含まれる因子(p400)を免疫共沈降法にて見出した。さらに、ペルオキシソーム膜形成不全細胞(pex3変異/DLP1変異体発現細胞)を用いて、de novoペルオキシソーム膜形成時の膜分裂阻害は、ペルオキシソーム膜形成初期中間構造体を蓄積させることも見出した。 B) ペルオキシソーム形成障害の分子機構の解明 神経細胞の形態に異常を生じさせるグリア細胞由来の神経栄養因子の発現増加は、ペルオキシソーム欠損性グリア細胞における転写促進が原因であるとの結果を得た。ペルオキシソーム形成障害PEX14ΔC/ΔCマウスの小脳の特定の領域においてグリア細胞由来神経栄養因子の発現の増加を見出した。しかしながら、大脳などの他の領域では本因子の増加は認められず、本因子の動態異常と小脳の形成・発達の障害との関連が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A) ペルオキシソーム膜形成の分子機構の解明 ペルオキシソーム膜タンパク質の新生鎖合成時やサイトゾル因子を介するペルオキシソーム膜への標的化に新たな制御機構の存在を見出しており、ペルオキシソーム膜タンパク質局在化の詳細な分子基盤の解明が期待される。また、ペルオキシソーム膜形成初期中間構造体を蓄積させる実験系の確立は、ペルオキシソームの成熟化において”de novo 合成”説または”growth and division” 説かを解決すべく新たなアプローチを可能とし、ペルオキシソーム膜形成機構の解明に大きく貢献するものである。 B) ペルオキシソーム形成障害の分子機構の解明 ペルオキシソーム形成障害PEX14ΔC/ΔCマウスを用いて、グリア細胞由来神経栄養因子の動態異常による新生仔脳の形成障害様式を明らかにしつつある。グリア細胞由来神経栄養因子の動態障害を誘導するペルオキシソーム代謝系の異常を明らかにすることは、ペルオキシソーム欠損症の障害機構の解明に直結するものである。また、確立済のPEX2遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスで見出している脳機能障害は、中枢神経系の恒常性維持におけるペルオキシソーム代謝機能の重要性を示唆するものである。これらの成果は、未解明の部分が多いペルオキシソーム膜の起源やペルオキシソーム膜形成初期過程を含むペルオキシソームの膜形成・分裂および形態制御の分子機構、高次生命機能におけるペルオキシソームの役割とその異常を起因とする障害メカニズムの解明に至る成果が得られるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に見出したペルオキシソーム膜タンパク質局在化の新たな制御機構を詳細に検討し明らかにする。さらに、ペルオキシソーム膜形成不全細胞のペルオキシソーム形成過程において蓄積されるペルオキシソーム膜形成初期中間構造体の形態学的特徴を指標とし、ペルオキシソームの”de novo 合成”と”growth and division”を別々に分けた形で解析し、各ステップに関与する分子の同定と作用機序を明らかにする。これらの成果を基に、ペルオキシソームの起源や膜形成初期過程を含むペルオキシソームの膜形成・分裂および形態制御の分子機構を解明する。 また、PEX14ΔC/ΔCマウスを用いたペルオキシソーム形成不全による小脳障害の様式・発症機構解明に加え、PEX2コンディショナルノックアウトマウスにおける脳機能障害の発症機構も明らかにし、中枢神経系の構築と恒常性維持におけるペルオキシソームの機能を解明する。 これらの研究成果によって、オルガネラの恒常性維持と機能適応メカニズムの統括である「オルガネラスタシス」を解明し、オルガネラの形成、動的制御、品質管理という一連のネットワークシステムで達成される細胞の機能発現制御に基づいた生命活動を理解する。
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Research Products
(24 results)