2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a shuttle vector which is autonomously replicable in chloroplast and E. coli
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17H03750
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
寺地 徹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90202192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 博 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (10210345)
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 葉緑体形質転換 / シャトルベクター / 自律複製 / タバコ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究グループでは、以前作出した斑入りを示す葉緑体の遺伝子組換えタバコに、著しくコピー数が増加した「ミニサークル」(組換え型の葉緑体ゲノムからループアウトしてできた22kbの環状DNA分子)を見いだしている。本研究の目的は、このミニサークルを利用して、葉緑体と大腸菌の双方で自律的に複製可能なシャトルベクターを初めて開発することにある。 本研究では、このミニサークルに由来する3つの葉緑体DNA断片を、大腸菌の汎用プラスミドベクターにそれぞれクローニングし、抗生物質耐性マーカーであるaadAカセットを連結した後、パーティクルガン法によりタバコの葉へ撃ち込んだ。その結果、全てのプラスミドで形質転換体が得られ、さらに形質転換体から調製したDNAの解析から、撃ち込んだプラスミドが形質転換体の葉緑体内で複製、維持されていることが示された。このことは、タバコの葉緑体と大腸菌の双方で自律的に複製可能な3種類のシャトルベクターを構築することが可能であることを示す。現在まで、これらのベクターによりタバコへ導入された遺伝子は、選抜マーカーのaadAのみであるが、理論上、このシャトルベクターは任意の遺伝子をタバコの葉緑体へ導入できると考えられるので、今後、aadA以外の遺伝子の導入を試みる。 一方、この研究で用いた、葉緑体DNA断片を、大腸菌のプラスミドベクターに単に連結して葉緑体へ導入する手法は、葉緑体における複製起点を同定するためにも応用可能であり、この方面へも研究を展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉緑体と大腸菌のシャトルベクターに利用可能な複製起点が、タバコの葉緑体ゲノムのミニサークル以外の領域にも存在するかを探るため、今年度は以下の実験を行った。タバコの葉から葉緑体DNAを単離し、制限酵素SacI及びXhoIで二重消化し、大腸菌のプラスミドベクターに挿入した。その結果、これまでに計14種類の異なる葉緑体DNA断片をクローニングすることができた。 得られたプラスミドを、3種類ずつ混合し、パーティクルガン法によりタバコの葉へ撃ち込んだところ、形質転換体が得られたプラスミドのセットが存在した。具体的に、各セットを36回ずつタバコの葉に撃ち込んだところ、a,k,mと名付けた葉緑体DNA断片を持つプラスミドのセットから6個体、d,e,m、f,j,l、b,c,gの各セットからそれぞれ1個体ずつ形質転換体を得ることができた。 各形質転換体の葉から全DNAを抽出し、大腸菌へトランスフォームしたところ、9個体の全DNAのうち7個体のDNAで、多数のアンピシリン耐性コロニーを観察することができた。得られたコロニーについて、コロニーPCR及びシークエンシングにより、プラスミドが持つ葉緑体DNA断片の特定を行った。その結果、断片mを持つもの、jを持つもの、eあるいはmを持つもの、kあるいはmを持つものの4種類が存在することがわかった。 これら形質転換体に維持されていた葉緑体DNA断片をシークエンシングにより解析したところ、断片jとkはミニサークルに含まれる配列であったが、断片eとmはミニサークルには含まれていない配列であった。これらの結果から、葉緑体ゲノムには、複製起点として働く配列が複数存在していることが示唆された。 以上、シャトルベクターを構築することができたこと、葉緑体の複製起点に関する新知見が得られたことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した葉緑体と大腸菌のシャトルベクターへ有用遺伝子を導入し、新たな形質転換体を作出する。また、形質転換体を開花・結実するまで育成し、このベクターが後代へ伝達するか調査する。 葉緑体DNAの複製起点の同定に関する実験を、タバコのゲノム全領域について行う。また、この実験の対象をレタス、トマトおよびコムギなど他の植物へも拡張し、この実験方法と得られる結果の一般性を検証する。 さらに、このベクターから目的遺伝子のみを葉緑体ゲノムへ移行させることで、抗生物質耐性遺伝子を持たない、マーカーフリー組換え体を作出する方法を確立する。
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