2017 Fiscal Year Annual Research Report
タマネギ鱗茎におけるフルクトオリゴ糖の代謝メカニズムの解明
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17H03760
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志村 華子 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20507230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 敬司 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90441964)
前田 智雄 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90530478)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タマネギ / フルクトオリゴ糖 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
フルクトオリゴ糖(FOS)の合成および分解にはフルクトース転移や分解反応を触媒するインベルターゼファミリーが関わる。これらのインベルターゼファミリー遺伝子の保存領域を増幅する縮重プライマーを作成し、FOS代謝に関わる遺伝子の同定を試みた。その結果、液胞型インベルターゼグループから1-SST、6G-FFT、さらに1-SSTや6G-FFTとは異なる別の配列が得られた。細胞璧インベルターゼグループからは3種類の候補配列が得られた。全長配列を決定できたものは、Pichia pastorisでの発現ベクターにクローニングし、組換えタンパク質の発現を試みた。その結果、解析したクローンの中には、1-ケストースや6-ケストースの分解活性を持つものがあり、FOSの分解酵素遺伝子であることが示唆された。また、タバコ細胞を用いた酵素発現系の確立を検討し、前述の候補配列の一部についてその活性を評価した。その結果、1-ケストース分解活性を植物細胞でも確認することができ、タマネギ初であるFOS分解遺伝子を得ることができた また、タマネギの生育段階におけるFOS動態の解析を行ったところ、これまで確認されていた収穫時の鱗茎FOSの品種間差は、定植直後から鱗茎肥大までにはあらわれず、鱗茎肥大開始後に明確になることが分かった。鱗茎抽出物を用いたFOS代謝酵素の活性評価も行ったところ、鱗茎が肥大する前にはFOS分解活性が高くなる時期があり、この時の分解活性に品種間差があることが見出された。 また、タマネギ組換え体の作出についても予備実験を開始したところ、カルスの状態において導入した外来GUS遺伝子の発現を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タマネギにおけるFOS代謝の分子メカニズムの中でも分解に関わる知見はほとんどなかったが、今回の研究において、タマネギにおいてFOS分解遺伝子の有力候補を得ることができた。この配列は液胞型インベルターゼグループと相同性を持つことから、タマネギでは他のフルクタンを蓄積するような植物とは異なる独自のFOS分解メカニズムを進化させている可能性が示唆され、学術的にも興味深い知見を得ることができた。 また、様々な植物でFOS代謝酵素遺伝子の研究は行われているが、酵素活性を植物細胞で評価する研究例はほとんどない。本研究では、タバコのプロトプラストを用いた一過的遺伝子発現系を利用して、タマネギのFOS代謝遺伝子を発現させてその酵素活性を検出することに成功した。 さらに、タマネギの生育期間別のFOS動態の解析では、FOS含量の品種間差には、鱗茎肥大開始前後のFOS分解が影響を及ぼすという新しい知見を得ることができた。これまで、タマネギの組換え体作出は困難とされているが、予備実験では外来遺伝子の発現を導入することができており、組換え体の作出には再分化の条件検討が重要であることが分かった。これら29年度の研究で得られた結果をふまえ、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、FOS分解系の遺伝子発現量がFOS含量や組成の品種間差に影響を及ぼす可能性が示唆されたが、FOS合成系の遺伝子については差異がないことが考えられた。そこで、FOSの合成については、律速となると予想されるスクロース代謝にも着目し、これまでに分かっていなかったスクローストランスポーターの同定や、スクロース量がFOS代謝にどのように関わるのかを明らかにすることを検討する。また、今回、FOS分解に関わる遺伝子が見出されたが、その一つはFOS転移酵素に配列相同性があることが分かった。今後、メタノール資化酵母発現系および植物細胞発現系を用いて、この酵素の基質特異性や細胞内局在などの特性について詳細な解析を行っていく必要がある。また、タマネギにおけるFOS代謝関連遺伝子の発現抑制の影響をみるためには、組換えタマネギの作出も重要となる。予備実験では外来遺伝子の発現を導入することができていたが、カルスからの再分化に条件検討が必要であることが分かった。そこで、再分化しやすい品種を使うなどの検討をする予定である。鱗茎形成過程におけるFOS量の変化を調べたところ、実生時から鱗茎肥大前までに大きなFOS量の品種間差はなく、FOS蓄積量の違いは鱗茎肥大開始後から収穫期までに生じることが分かった。この傾向が普遍的であるかを示すための反復実験を行うとともに、温度や日長を変化させた条件も設定することで、環境要因とFOS蓄積との関連を明らかすることを計画したい。
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[Journal Article] 青森県におけるタマネギ春まき作型に適した品種評価2018
Author(s)
奥聡史, 前田智雄, 平川直人, 平野里美, 佐々木雄輝, 村木美保, Wambrauw Daniel Zadrak, 小山内祥代, 本多和茂, 鈴木卓, 山崎篤
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Journal Title
園芸学研究
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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[Journal Article] Analysis of varietal differences in the fructo-oligosaccharide accumulation profile among onion (Allium cepa L.) cultivars grown by spring-sown cultivation.2017
Author(s)
Maeda T, Watanabe A, Wambrauw DZ, Osanai S, Honda K, Oku S, Shimura H, Suzuki T, Yamasaki A, Okabe Y, Ueno K, Onodera S.
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Journal Title
The Horticulture Journal
Volume: 86
Pages: 501-510
Peer Reviewed
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