2017 Fiscal Year Annual Research Report
スギのオゾン耐性機構は極端現象にも有効に作用するか?
Project/Area Number |
17H03839
|
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
飛田 博順 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353781)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢崎 健一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353890)
深山 貴文 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353875)
上野 真義 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40414479)
伊豆田 猛 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20212946)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 対流圏オゾン / 天然スギ / バイオマス配分 / モノテルペン / 活性酸素消去系酵素活性 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギのオゾンに対する耐性機構を解明するために、開放型オゾン暴露施設内に植栽したスギ挿し木苗3クローンに、オゾン付加処理を行い、光合成機能、揮発性有機化合物(モノテルペン)生成量等の測定を行った。 光合成機能(電子伝達速度)は、屋久島産スギのみ、苗の下部の1年生針葉と当年生針葉で、オゾン付加により低下する傾向を示した。揮発性有機化合物生成に対するオゾン付加の影響は産地間差が見られ、屋久島産スギではモノテルペン放出量が大幅に増加し、河津産スギではモノテルペンの組成が変化した。 光合成機能の指標である光飽和時の電子伝達速度は、屋久島産スギの苗の下部の1年生針葉と当年生針葉でのみ、オゾン処理により低下する傾向を示したが、苗の上部の当年生針葉や他のクローンでは明瞭な差が見られなかった。揮発性有機化合物の生成は、オゾンに対する耐性機構として作用する可能性が考えられている。スギはモノテルペンの生成量が多い樹種である。安定的な室内実験手法の開発により、モノテルペン放出特性の針葉樹クローン間の比較が可能になった。8月に通気法によりスギ針葉のモノテルペン放出量を測定した結果、オゾン暴露後に屋久島産スギはモノテルペン放出量が大きく上昇し、河津産スギではモノテルペンの組成が大きく変化した。活性酸素消去系酵素活性の分析と発現遺伝子解析のために、各処理個体の1年生針葉と当年生針葉のサンプリングを年3回行い、冷凍保存した。年度内に両項目の分析を実施すると伴に、苗の地上部の刈り取りと地下部の掘り取りを実施する。以上のデータセットがそろった段階で、トランスクリプトーム解析によりオゾン耐性に関与すると考えられる発現遺伝子候補の探索を開始する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り、開放型オゾン暴露施設内に植栽したスギ挿し木苗3クローンに、2年目のオゾン付加処理を行った。光合成活性(電子伝達速度)の評価を行い、屋久島産スギの一年生針葉と苗の下部の当年生針葉で、オゾン処理により低下する傾向を示したが、苗の上部の当年生針葉では明瞭な差が見られないことを明らかにした。安定的な室内実験手法の開発に成功したことで、モノテルペン放出特性の針葉樹地域品種間の比較が可能になった。オゾン暴露後に屋久島産スギはモノテルペン放出量が大きく上昇し、河津産スギではモノテルペンの組成が大きく変化するなど、大きな地域品種間差が存在することが明らかになった。この揮発性物質の放出に関して、すでに論文投稿(査読あり、英文)がされており、予定より早い成果の公表が期待できる。活性酸素消去系酵素活性等の分析、RNA-Seqの実施、伐倒・掘り取りサンプリングについても、予定通り、年度内に実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
スギのオゾンに対する耐性機構を解明するために、初年度の実験で得られたデータからトランスクリプトーム解析によりオゾン耐性に関与すると考えられる発現遺伝子候補の探索を継続して行う。 オゾンに対する耐性機構が、乾燥ストレスに対してプラスに作用するのか、マイナスの効果を持つのか明らかにするために、オゾン付加に加えて、極端現象の中の無降水期間の長期化を想定した降雨遮断による乾燥処理を行う。天然スギの各分類系統中の典型的なクローンを新たに選択し、挿し木苗を作成し、1年間育苗したものを材料に用いる。4月に開放型オゾン暴露施設内に植栽し、初年度と同様のオゾン付加処理を実施する。乾燥処理は処理2年目に実施する。
|
Research Products
(3 results)