2018 Fiscal Year Annual Research Report
An Interdisciplinary Study on the Developments of Agricultural Cooperatives in the U.S. and Canada from the View Points of Market Strucutres, Farm Structures, and Social Relations
Project/Area Number |
17H03884
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
磯田 宏 九州大学, 農学研究院, 教授 (00193392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 清彦 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (30736666)
松原 豊彦 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (50165859)
佐藤 加寿子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (80294908)
小林 国之 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10451410)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農業経済学 / 農村社会学 / 農業協同組合 / アメリカ農業 / カナダ農業 / 酪農 / 稲作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1)米国・カナダの主要品目・地域における農業展開の特徴と類型を析出する,(2)それら類型差をもたらす経済的要因を市場構造と農業構造の視角から,(3)社会関係的要因を協同意識の規範変化や支配的言説から,学際的にかつ日米加の国際共同研究をつうじて解明することにある。 本年度は,①カナダの新型有機農協Food Directとその組合員有機農業生産者の実態調査分析を行ない,食用豆等を生産する有機農業者がニッチ市場向け販売チャネル構築のために出資して2002年に新設し,小売向け包装品の9割を米国に輸出して組合員の所得向上に貢献していることを明らかにした。 ②昨年度に引き続き最大級多角化酪農協Land O'Lakesに収斂していく五大湖地帯酪農協の合併・吸収過程についての資料収集とヒアリング調査(ウィスコンシン大学協同組合センター)にもとづく分析を進めた。 ③近年巨大規模酪農協として登場したカンザス州本拠のDFA農協とカリフォルニア州本拠のCDI農協,およびそれぞれの組合員生産者の実態調査分析を行ない,それらが川下の乳製品加工業および小売業の顕著な集中化とそれに伴う市場影響力・支配力への対応,ならびに乳価低落下での集乳・処理加工販売コスト削減を狙いに急速な合併買収を繰り返したこと,酪農生産構造が二極化する中で相対的少数の大規模組合員と相対的多数の中規模組合員との利害調整,および事業地域の広域化に伴う地域間利害調整の課題に対応すべくガバナンス・組合員参加方式再編を進めていることが明らかになった。 ④カリフォルニア精米農協FCSの実態調査分析を行ない,稲作農業構造の二極化,巨大企業ADMやBungeの参入・事業拡大等による市場競争激化の下で,FCS農協組合員は規模的には多様だが,相対的に年齢層が高く稲作経営歴が長く財務基盤が強い経営者が結集していること等が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように,カナダ新型有機農協,米国巨大酪農協,カリフォルニア州精米農協とそれらの組合員に関する,農協展開類型差の経済的要因を構成する市場構造および農業構造視角からの調査分析はおおむね計画どおりに進行させることができた。しかしその社会関係的要因である生産者の協同規範意識の差異・変化や支配的言説の推転などの社会学的視角からの調査分析が,(1)2017年度に経済的要因分析を行なった大規模穀物農協や大規模多角的広域酪農協,(2)同様に本年度に行なった急激に台頭した巨大酪農協や独自の歴史と事業組織形態を有する精米農協,(3)カナダ有機農協や米国北東部中小ニッチ型酪農協などについて,同一対象農協とその組合員生産者への追加・追跡調査のための現地との調整が順調に進まなかった,また言説分析等に欠かせない歴史的資料類が繰り返し行なわれた農協合併吸収等によって散逸して十分保存されていない等の要因から,やや遅れている。 また米国連邦政府の緊縮的財政の影響で,同国農務省における農協統計情報が中断したままであったり,内容的に劣化したりしていることから,全分野的で今日まで連続する農協統計データの収集に想定外の困難を来たし,それにもとづく分野横断的な展開類型の統計的把握に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(次年度)の推進方策は,基本的に三つの柱とする。 第一は,上述した「やや遅れている」状況を改善するために,(1)これまで文献資料調査を進めてきた大規模酪農協Land O'Lakesについて,農協と組合員について経済的要因視角メンバー(小林)と社会関係的要因視角メンバー(坂本)が同行実態調査分析を実施する。(2)昨年度農協調査分析を実施したカリフォルニア精米農協FRCの組合員について経済的要因視角メンバー(磯田)が社会関係的要因視角協力者(UCデービス校Taylor博士)の協力を仰いで同行実態調査分析を実施する。(3)米国東北部でニッチ的展開を進める中小酪農協の組合員調査分析を実施する(佐藤。米国社会学協力者USDA・Gray博士の支援も要請する)。 第二は,農協展開類型の未着手分野として,(1)完全プール型・全量共販農協(いわゆるサピロ型)の原点ともされるカリフォルニア特産品農協としてアーモンドを扱うBlue Diamond農協とその組合員調査を実施する(磯田,Taylor博士)。(2)カナダで農協から株式会社へ転換した類型としてマニトバ州旧小麦プール農協およびサスカッチュワン州有機農協Direct Foodの調査分析を実施する(松原,サスカッチュワン大学Gertler准教授)。 第三は,研究課題の最終年度として,全体の統計分析,実態調査分析を取りまとめるため開催して総括方針を確認し,同方針に沿って科学研究費成果報告書を作成すると同時 に,研究結果を関係学会・雑誌等で公表していく。これらの執筆や公表に当たっては,必要性と条件に応じて海外研究協力者との共著や分担執筆等を行ない,国際共同研究としての内実を整える。
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