2018 Fiscal Year Annual Research Report
Responses of gene expressions in rice plants to micro-meteorological conditions; their physiological role in absorption of water and nutrients from roots
Project/Area Number |
17H03896
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
桑形 恒男 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (90195602)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 始彦 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00355538)
伊川 浩樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究員 (10754393)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | アクアポリン / イネ / 環境応答 / 群落微気象 / 蒸散 / 植物生理 / トランスクリプトーム / 農業生産環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) イネ遺伝子発現解析のための基盤データの整備 初年度に引き続き、形質が異なる2つのイネ品種を対象に、水田群落での遺伝子発現の微気象応答実験を実施した。気象条件が異なる複数日を対象に、2つの品種に対する群落の微気象環境と、光合成や気孔コンダクタンスを計測し、生育調査を実施すると共に、遺伝子発現解析ならびにC/Nなどの無機分析のためのサンプルを取得した。また、土壌水分や酸化還元電位の変化がイネの生育動態におよぼす影響を調べる目的で、北陸193号(インディカ)と日本晴(ジャポニカ)をポット栽培し、還元処理(セルロース添加)および中干し(乾燥)処理を加えた場合の生育反応を調査するとともに、根の遺伝子発現解析と植物体の無機分析のためのサンプルを採取した。 (2) 微気象環境に対する遺伝子発現応答とその生理的役割の解明 初年度に整理した水田群落の実験データ(栄養成長期~出穂期)を用いて、各遺伝子の発現量の日々の微気象環境に対する応答性を定式化した。葉の複数のアクアポリン分子種では、日中の遺伝子発現量が蒸散要求量と顕著な正の相関を有し、水耕ポット栽培イネの根と葉で得られた発現量応答(初年度)と同様な特性を示した。蒸散要求量に対する応答感度はジャポニカ品種(コシヒカリ)よりインディカ品種(タカナリ)の方がやや高かった。一方、根のアクアポリン発現量には蒸散要求量に対する顕著な応答性が認められなかったが、解析対象データには生育ステージ変化の影響も含まれることから、さらなる検討の余地がある。 また(1)で整備したデータを用いて、日々の群落微気象環境や長期の湿度変化、土壌水分の変化などが、蒸散量や光合成、養分輸送などのイネ生育動態に与える影響を解析した。このうち土壌水分変化の影響に関しては、土壌の乾燥処理および還元処理により生育は抑制され、還元処理による生育抑制の乾燥による改善は小さかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、研究分担者ならびに研究協力者が手分けをして、以下に示す研究計画を推進した。初年度と同様に、各サブ課題とも当初予定していた内容をほぼ実施することができた。おおむね順調に進展しているものとの判断される。 研究計画の内容: (1) イネ遺伝子発現解析のための基盤データの整備( 1) 既存の実験データの整備(2017~2018年度)、2) 新規実験データの取得(2017~2019 年度)) (2) 微気象環境に対する遺伝子発現応答とその生理的役割の解明( 1) 微気象環境に対する遺伝子発現応答の数理解析(2017~2019 年度)、2) 微気象環境がイネ生育動態に与える影響(2018~2019 年度)、3) 遺伝子の微気象環境応答の生理的な役割の解明(2019 年度)) 昨年度に引き続き、新学術領域研究『学術研究支援基盤形成』の「先進ゲノム支援」に採択され、遺伝子の高度な情報解析に関する支援を受けることができた。これら支援プログラムの成果を活用することで、本研究課題が最新のゲノム科学に基づく新たな研究テーマへと発展する可能性が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) イネ遺伝子発現解析のための基盤データの整備 a.水田群落での微気象応答実験:昨年度に引き続き、形質が異なる2品種に対する群落の微気象環境ならび、光合成、気孔コンダクタンスを計測し、生育調査の実施と共に、遺伝子解析ならびに無機成分分析のサンプルを取得する。b. 土壌水分に対する応答実験:前年まで中干し処理(急激な乾燥処理)の代わりに継続的な水分調節処理(マイルドな乾燥処理)を行い、遺伝子解析ならび無機成分分析のサンプルの取得と共に、両者の結果を比較する。 (2) 微気象環境に対する遺伝子発現応答とその生理的役割の解明 「水耕栽培イネ用いた野外実験」、「圃場での栽培実験」、「人工気象室や網室での湿度応答ならび土壌乾燥&還元処理実験」、「FACE(開放系大気CO2増加)実験」などのイネに対する環境応答実験で得られた、水や養分の輸送を担うアクアポリンなどの遺伝子発現量の日々の微気象環境(蒸散要求量、気温、根域温度、土壌水分など)に対する応答性を整理すると共に、それら遺伝子の地上部(葉)と地下部(根)における発現量の微気象環境に対する応答性の、栽培方法(水耕/土耕)や品種(ジャポニカ/インディカ)、生育ステージに対する依存性を評価する。また(1)で整備したデータを用いて、微気象環境の変化が蒸散量や光合成・養分輸送などのイネ生育動態に与える影響を解析する。 蒸散要求量や土壌水分などの変化が、イネの蒸散量や養分吸収に与える影響と、アクアポリンや養分輸送に関わる各種遺伝子の発現量変化との関係から、それら遺伝子の微気象環境に対する応答の生理的な役割について検討する。インディカ品種のタカナリはジャポニカ品種に比べて高収量、高蒸散かつ高温特性に優れるが、これらの形質に関係した両品種間での遺伝子発現応答の違いについても抽出する。さらに根と葉の遺伝子の発現応答の違いとその生理的な意味を考察する。
|
Research Products
(11 results)