2019 Fiscal Year Annual Research Report
Single cell応答に基づく原虫病研究の基盤構築と有用性の評価
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17H03912
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山岸 潤也 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (80535328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1細胞トランスクリプトーム / トキソプラズマ / 原虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目にあたるR1年度は、H30年度において構築に成功したトキソプラズマのブラディゾイト誘導後のライブラリーについてシーケンスを行い、感染フラスコでの感染細胞、感染フラスコでの非感染細胞、非感染フラスコでの非感染細胞の比較を行った。まず、宿主遺伝子の発現プロフェイルでラスターを作成したところ大きく3群に分かれた。そのうちresponderと名付けた1群では、他と比べてトキソプラズマ遺伝子の発現が明らかに強いことが判明した。次に、トキソプラズマ遺伝子の発現により、感染細胞と非感染細胞を分けることに成功し、responder群にトキソプラズマ感染細胞が多く含まれることが判明した。一方、残る2群の違いについて細胞周期を疑ったが、有意な差は認められなかった。興味深いことに、これら2群内には広く薄く感染細胞が分布していた。これら感染細胞におけるトキソプラズマの遺伝子発現は、responder群の感染細胞におけるトキソプラズマの遺伝子発現より弱く、より成熟したブラディゾイトに変化した可能性が考えられた。 一方、①感染フラスコでの感染細胞、②感染フラスコでの非感染細胞、③非感染フラスコでの非感染細胞について、宿主免疫関連遺伝子の発現プロファイルに注目して解析したところ、興味深いことにその発現量は、②>③>①の順となった。これは、感染細胞では宿主免疫応答を抑制する仕組みが、また、周囲の細胞の免疫応答を亢進する仕組みがある可能性が示唆されたが、その分子実態の解明については今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目、および、2年目で、原虫に適応可能な1細胞のトランスクリプトーム解析の評価を進め、3年目にあたる令和1年度は、Rhapsodyシステムを用いてトキソプラズマ感染細胞の1細胞のトランスクリプトーム解析が可能であることを実証した。また、得られた結果は、バルクのトランスクリプトーム解析では見えない現象が1細胞トランスクリプトーム解析で見えてくるという、当初仮説を支持するものであり、改めて、1細胞のトランスクリプトーム解析の有用性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
トキソプラズマ感染細胞の1細胞のトランスクリプトーム解析で示唆されたresponder細胞の実在を、IFATなど、トランスクリプトーム解析以外の方法で確認し、証明する。また、感染フラスコでの非感染細胞の免疫応答遺伝子群の発現が感染細胞より更新することについて、その分子実態の解明を目指した予備実験を行う。さらに、トキソプラズマ以外の原虫の1細胞トランスクリプトーム解析基盤を確立するために、トリパノソーマ原虫の解析を進める。また、感染マウスの1細胞トランスクリプトーム解析を進め、病原体、宿主の双方の1細胞トランスクリプトーム解析基盤を確立する。
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