2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel anti-cancer strategy targeting protein phosphatases
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17H03915
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
大浜 剛 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (50579018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大松 勉 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60455392)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PP2A / SET / E2F1 / 骨肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、停滞感のある抗がん剤開発の分野に対して、旧来の分子標的薬開発とは逆転の発想である「ホスファターゼを活性化する創薬」を提案するための基盤になることである。具体的には、最近申請者が発見した、重要ながん抑制因子であるホスファターゼPP2A、PP2A阻害タンパク質SET、および転写因子E2F1から構成されるシグナル伝達「SET/PP2A/E2F1軸」が、がんの悪性化を引き起こす分子機構と、イヌおよびヒトの腫瘍における役割の比較検証を行う。 2017年度、ヒトおよびイヌの骨肉腫細胞株について、ET発現の低下が、がん細胞の表現型に与える影響について解析を行ったなかで、ヒトとイヌの骨肉腫細胞株では、SET発現抑制に対する反応性が大きく異なり、イヌ細胞ではSET発現抑制による抗がん効果が弱いことを報告していた。しかし、その後の詳細な解析により、SETの働きをしっかりと抑える事ができればイヌ骨肉腫細胞株に対しても抗がん効果を発揮することが明らかになった。イヌ骨肉腫細胞株では、SET標的薬が抗がん効果を示すことも確認できた。また、SET発現抑制の効果はヒト、イヌに関わらず細胞株によってかなり異なることから、昨年度の1種に加えてさらに2種のヒト骨肉腫細胞株について、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析を行い、SET発現抑制が細胞内シグナル伝達系に与える影響を解析した。現在、得られたデータをもとに、着目したシグナル伝達機構について詳細な検討を行っている。 「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いた検討について、PP2AとSETの結合(PPI)を制御するシグナル伝達機構を明らかにするため、2017年度は各種阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングを行い、PPIに影響を与える阻害剤を幾つか同定した。2018年度は、ヒット化合物の類縁化合物について検討を行い、構造活性相関に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトおよびイヌの骨肉腫細胞株を用いた検討については、SET発現抑制およびSET標的薬の効果等、計画通りに研究が進行している。イヌ骨肉腫細胞株のデータに関しては、現在論文投稿の準備中である。一方で、イヌ骨肉腫臨床サンプルについては、サンプル採取が可能な手術症例が予定よりも少なく、計画通りに進んでいない。申請額と交付研究費の差の関係で解析を行う目処がたっていないが、引き続きサンプル収集を継続する。一方で最近、海外の症例ではあるが、イヌ骨肉腫臨床サンプルの次世代シークエンサー解析のデータがオープンにされたことから、今後はパブリックデータを有効に活用したいと考えている。 SETによるPP2A阻害の分子機構については、本研究の特色の一つである「発光反応によるタンパク質結合解析系」を用いることで新たな知見が得られ、現在論文投稿中である。 以上のように、概ね計画通り研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
イヌ骨肉腫細胞株におけるSET発現抑制・SET標的薬の効果については、既存の抗がん剤とSET標的薬との併用効果の検討を行う予定である。ヒト骨肉腫細胞株におけるSET発現抑制の効果については、2018年度の次世代シークエンサーによる解析結果をもとに、抗がん効果に関わるシグナル伝達系を明らかにする。また、こちらについても既存の抗がん剤との併用効果を検討する予定である。イヌとヒトの骨肉腫の比較生物学的な解析については、パブリックデータを用いたドライ解析を行う。SETによるPP2A阻害の分子機構については、論文レフリーのコメントをもとに適宜追加実験を行い、2019年度中の採択を目指す。
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Research Products
(7 results)