2018 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍リンパ節標的型クラスターナノDDSによる複合がん免疫療法
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17H03974
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (20604458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬物送達学 / がん免疫 / 脂質ナノ粒子 / ナノテクノロジー / リンパ節 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、腫瘍リンパ節内の抑制性樹状細胞の抑制解除と免疫活性化を担うナノ粒子と制御性T細胞(Treg)の機能抑制を担うナノ粒子をクラスター化したクラスターナノ粒子を開発することで、腫瘍所属リンパ節(Tumor-Draining Lymph Node: TDLN)内での免疫システムの抑制解除と自発的がん免疫誘導を実現し、ナノテクに基づいた新しいがん免疫療法を確立する。 本年度は昨年度に構築した粒子径30 nmのTDLN標的型脂質ナノ粒子(Lipid Nano Particle: LNP)にアジュバントとして細胞内DNAセンサーであるstimulator of interferon genes(STING)経路を活性化する短鎖DNAを搭載し、がん免疫応答の評価を行った。その結果、リンパ節内での樹状細胞の活性化や抗原特異的T細胞の活性化において、30 nmのLNPは100 nmや200 nmのLNPと比較して有意に優れていることが示されたが、全身のがん免疫応答評価では有意な違いは認められなかった。この結果を受けて、リンパ節局所から全身のがん免疫応答への過程の見直しを行い、原因となる因子の特定に成功した。 また、免疫細胞にsiRNAを導入するためのLNPの毒性軽減に成功した。免疫細胞へのsiRNA導入は抑制性樹状細胞やTregの機能を遺伝子レベルで制御するために必須の技術である。免疫細胞へと効率的にsiRNAを導入するためにはカチオン性脂質が重要であるが、siRNAと静電的に相互作用してLNPを形成するためにカチオン性脂質が使用され、毒性発現の原因となっていると考えられた。そこで、カチオン性脂質の代わりにポリカチオンであるプロタミンを用いてsiRNAをコア化し、LNPへと封入することでカチオン性脂質の量を減らすことに成功した。その結果、免疫細胞への細胞毒性は有意に軽減され、遺伝子発現抑制活性は同レベルに維持されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リンパ節標的化ナノ粒子によるがん免疫応答の誘導が予想に反して十分ではなく、解決策を見出すために時間を要したために、当初の計画よりも若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ節標的型ナノ粒子のがん免疫応答が予想に反して十分でなかった原因をさらに詳細に調べ、その要因を解決するための戦略を組み合わせることにより、本申請研究のコンセプトの検証を行う予定である。
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Research Products
(6 results)