2018 Fiscal Year Annual Research Report
サクセスフル・エイジングの促進因子に関する縦断研究:大崎コホート高齢者研究
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17H04130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻 一郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20171994)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会医学 / 老化 / 生活の質 / 疫学 / 高齢者保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
後期高齢者におけるサクセスフル・エイジング(心身機能の衰えが少なく、生活満足度の高い加齢)の促進因子を解明することを目的として、2006年12月に宮城県大崎市で行われた生活習慣などのアンケート調査に回答した65歳以上の男女を対象に、心身の健康状態や生活の質に関する郵送質問紙調査を2017年12月に実施した。その回答をもとに、2006年時点の生活習慣などがサクセスフル・エイジングに及ぼす影響について検討する。 対象は、上記調査に回答した23,091人のうち、同調査時点で介護保険の要介護認定を受けていた者(1,979人)、要介護認定に関する追跡に同意しなかった者(6,333人)、追跡開始前に死亡・転出した者(5人)を除く、14,774人である。この間の死亡者(4,615人)、転出者(497人)を除く9,662人にアンケート調査票を2017年12月に郵送し、7,643人から有効回答があった。 サクセスフル・エイジングとは、介護保険認定非該当、抑うつなし(基本チェックリストの抑うつ5項目で該当なし)、生活の質良好(EuroQol 5 Dimensionで満点)、人生満足度が高い(Dienerによる人生満足尺度(Satisfaction With Life Scale:SWLS)で35点中25点以上)の全てに該当する者と定義した。 その結果、678人がサクセスフル・エイジングを達成したことが明らかとなった。追跡対象であった14,774人のうち、アンケート調査票の未回答者・無効回答者2,019人と上記の3尺度のいずれかに回答欠損のあった1,795人を除く10.463人におけるサクセスフル・エイジング達成率は6.5%であった(678 ÷(死亡者4,615+要介護認定あり2,146人+上記の3尺度に完全回答した3,702人))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、今回のアンケート調査データと2006年アンケート調査データ、さらにこの間の追跡情報データをリンケージさせ、統計解析データベースを構築した。これにより、サクセスフル・エイジングの達成状況を検討するとともに、アンケート調査回答(生活習慣・健康状態など)を地域間で比較した。 サクセスフル・エイジングの達成率は、上記の通り、6.5%であった。これは、3つの尺度のいずれかに回答欠損のあった1,795人を除いた完全回答者における達成率であった。一方、回答欠損者も分母に加えると、サクセスフル・エイジングの達成率は5.5%となる。また、完全回答者3,702人における上記3尺度で未達成であった(クリアできなかった)項目は、以下の通りであった。1項目が未達成は1,088人(抑うつ59人、QOL 496人、人生満足度533人)、2項目が未達成は1,013人(抑うつ+QOL 310人、抑うつ+人生満足度145人、QOL+人生満足度558人)、3項目全てが未達成は923人であった。 アンケート調査回答(生活習慣・健康状態など)の地域間比較では、大崎市が2006年に1市6町の合併により誕生したことを考慮して、旧7ヶ地域の間で比較検討した。その結果、旧古川地域では糖尿病や骨折・転倒が多いこと、閉じこもりが少ないこと、旧松山地域ではボランティア活動・地域活動が盛んであること、旧三本木地域では自歯20本以上の割合が高いこと、旧鹿島台地域では脳卒中の既往者や肥満者の割合が高いこと、旧岩出山地域は家から出ない高齢者が多いこと、旧鳴子地域では自歯20本以上の割合が低いことなどの特徴が浮かび上がってきた。これらの知見を大崎市民生部健康推進課に報告し、健康増進計画の立案・検討に活用された。 以上より、本研究事業は計画通り順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたり、サクセスフル・エイジングの促進因子に関する分析を以下の通り行う。 第1に、2006年調査回答(生活習慣・生活行動など)と2017年までのアウトカム(サクセスフル・エイジング vs 生活機能自立 vs 要介護発生 vs 死亡)との関連について多変量解析を行うことにより、サクセスフル・エイジングの促進因子(生活習慣・生活行動・心理社会的要因など)を明らかにする。 第2に、生活習慣の変容がサクセスフル・エイジングに及ぼす影響を検討する。2006年調査回答データと2017年調査回答データとをリンケージして、この間の生活習慣の変容(喫煙の中止、運動時間の増加、社会参加・趣味活動の開始、残存歯数の維持など)がサクセスフル・エイジングに及ぼす影響を解明し、高齢期における行動変容の意義を示す。 膨大な統計解析作業を実施するために若手研究者を確保する必要がある。また、国内外の学会で研究成果を発表し、関係研究者との意見交換を積極的に図る予定である。
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