2018 Fiscal Year Annual Research Report
Tracing of transmission routes of tuberculosis using geographical information of patients and genetic analysis of clinical isolates
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17H04136
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和田 崇之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (70332450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 直哉 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00637449)
中谷 友樹 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20298722)
山本 香織 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (70649011)
竹内 昌平 長崎県立大学, 看護栄養学部, 講師 (80432988)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子疫学 / 感染症 / 結核 / ゲノミクス / 地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度に引き続き国内で最も結核罹患率が高い自治体である大阪市を対象とした患者由来株の遺伝子解析,疫学情報の収集を行ってきた.患者居住地座標を取得したほか,前年度までに収集した様々な疫学情報について,二者間データとして出力するためのデータクリーニングを行った.比較ゲノムデータについても解析精度を高め,最終的な株間比較データを得た.最終的な対象数はゲノムデータの不良,同一患者による再発例を除いて177株となり,このうち71株からなる22組のゲノム一致性が高く,直近の伝播に基づく感染事例であることが推定された.これはVNTR法による型別一致から菌株一致が推定された62株(19組)よりも多く,型別分解能が低いとされたVNTR型別において不一致とされた菌株であっても実際には同一株である誤判定が一定頻度で起こり得ることを示す結果となった.本結果は予想された結果と異なっており,若年の結核患者において直近の伝播を調査する場合にVNTR型別をどのように解釈すべきかについて,いち早く公表すべき内容を含むため,学会発表での報告を早急に行う. 研究成果としては,同じく大阪市において集中的に患者数が多い地域を対象とした遺伝多型サーベイランスにより,近年においては伝播事例が減少傾向にあることを示した他,社会地区類型に着目した結核患者発生頻度の地域差解析による新たな知見を得た.本成果に関しては学術専門誌および学会発表により公表している.一方で,本課題で主眼としている人流データと遺伝多型解析結果の融合には至っておらず,最終年度にはその分析に注力する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H30年度までに,解析を行うデータクリーニングを終え,最終年度に向けた準備を整えた.患者情報となる疫学データ,菌株情報となる遺伝多型およびゲノムデータの紐付けを完了したことから,結核伝播を推定するために必要なデータリストは出揃ったものの,本課題で重要な位置付けとなる人流データの導入は未達成である.病原体の伝播に関する推定に役立てる場合,人流データは不特定多数の媒体,言わば水面に浮かぶ木の葉の動きを捉えるための水の流れというべきものである.つまり,患者情報・菌株情報とは異なったリソースからなるデータであることから,独立的に計算・出力させ,得られた結果を導入していくプロセスとなる.本課題ではこの導入方法に関する知見を模索し,実際に結核をモデルとした新しい感染症公衆衛生にフィードバックさせることを目標としている.年度区切りとして,このプロセスを2年目までに見通しを立てる予定であったので,この点をもって「やや遅れている」とした.しかし,現時点で本解析にも既に着手しており,最終年度において本来の進捗状況に至ることに関して問題の無い状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として,人流データに基づく距離定義を結核患者の疫学情報・結核菌の遺伝子情報と融合し,伝播経路推定への利用方法を検討していく.当初の予定として,利用する人流データは交通流動調査に基づくパーソントリップおよび携帯端末などによるGPSを想定していたが,これらに加えてインターネット上で展開されているソーシャルネットワークサービス(SNS)の投稿に付加された位置情報を活用した人流推定も加味することとする. 先行研究における遺伝系統解析の結果から,一部の系統群に属する菌株においてVNTR型別の一致性が高いことが示唆されていた.これらの菌株では地域内において緩やかな結核伝播経緯を反映したゲノム配列近傍性が観測される可能性があり,この系統群を対象とした比較ゲノム研究が本研究課題の対象としてより適正な患者集団であることが想定される.今年度までに分析した若年者結核患者由来株でも同様の結果が得られたことから,新しい研究対象としてこれらの患者群をリストアップするとともに,遺伝多型解析,ゲノムデータと患者データの確保を進めていくこととし,今後の研究展開を確固たるものにする.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Longitudinal genotyping surveillance of Mycobacterium tuberculosis in an area with high tuberculosis incidence shows high transmission rate of the modern Beijing subfamily in Japan2018
Author(s)
Yamamoto K, Takeuchi S, Seto J, Shimouchi A, Komukai J, Hase A, Nakamura H, Umeda K, Hirai Y, Matsumoto K, Ogasawara J, Wada T, Yamamoto T.
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Journal Title
Infection, Genetics and Evolution
Volume: S1567-1348(18)
Pages: 30714-30717
DOI
Peer Reviewed
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