2017 Fiscal Year Annual Research Report
医療ビッグデータによる耐性菌および抗菌薬の実態・関連性の解明と感染対策の開発推進
Project/Area Number |
17H04144
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 治久 九州大学, 医学研究院, 准教授 (30572119)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下野 信行 九州大学, 大学病院, 准教授 (70346782)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 抗菌薬 / 耐性菌 / 感受性 / DPC / JANIS / NDB |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「研究① 耐性菌発現と抗菌薬使用状況の関連性の解明」,「研究② 抗菌薬治療戦略の見える化と適正使用の評価」,「研究③ 抗菌薬適正使用支援プログラムの有効性評価」,「研究④ 耐性菌発現および抗菌薬使用の医療経済評価」の4研究を通じて,耐性菌発現を抑止するための感染対策を開発し,これを推進することである. これら研究を実施するために,平成29年度は研究に必要な以下のデータについて申請と収集までを行った.『平成22~28年度分のJANIS検査部門の全個票データ』(統計法に基づく申請),『平成22~28年度分の抗菌薬処方に関する全レセプトデータ(NDB)』(高確法に基づく申請),『平成27~29年度分の142病院におけるJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』(個別依頼). 「研究③ 抗菌薬適正使用支援プログラムの有効性評価」を実施するために,平成27年においてJANIS検査部門に参加しDPC適用されている1,149病院から無作為に選定した575病院を対象に研究協力を依頼し,142病院からデータを収集した.各病院のJANISデータから薬剤感受性とDPCデータから抗菌薬使用状況に関するデータを分析し,可視化した資料を作成し,研究協力病院にフィードバックを行った.1年間の経過観察後に,フィードバック後の薬剤感受性と抗菌薬使用状況の変化を検証する予定である. また,『平成22~28年度分のJANIS検査部門の全個票データ』を用いて,JANIS検査部門参加による有効性を評価するために,2011年から2014年の各年1月から継続して2014年12月まで参加している病院を対象に,メロペネムに対する緑膿菌の感受性の変化について線形混合効果モデルを用いて検証した.その結果,JANIS検査部門参加はわずかながら薬剤感受性の上昇に関係していることが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,耐性菌発現を抑止するための感染対策を開発し,これを推進するために,抗菌薬使用状況と薬剤感受性に関するビッグデータを収集し,これを有機的に統合させる研究である.そのために,『JANIS検査部門の全個票データ』(政府統計),『抗菌薬処方に関する全レセプトデータ』(ナショナルデータベース),『病院別のJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』を申請し,取得し,解析する. 当初の計画では,『JANIS検査部門の全個票データ』は,統計法に基づいてデータ利用申請を行い,データ提供を受けるまでを予定していた.実際には,「研究③ 抗菌薬適正使用支援プログラムの有効性評価」を行うために,JANIS検査部門参加による有効性の評価までを行うことができ,計画以上に進展することができた.また,『抗菌薬処方に関する全レセプトデータ』に関しては平成29年度計画ではデータの利用申請までを予定していたものの,データ提供まで至ることができた.それにより,平成30年度当初より,データ解析に着手することが可能になった.『病院別のJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』に関しては研究協力病院を50病院程度(研究応諾率:10%)と予想していたものの,実際には142病院(研究応諾率:24.7%)もの多くの医療機関から研究協力を得ることができた. 以上より,予定していた研究計画よりも早く研究環境が整備され,解析フェーズに着手でき,より多くのデータを蓄積できていると評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に蓄積した『平成22~28年度分のJANIS検査部門の全個票データ』,『平成22~28年度分の抗菌薬処方に関する全レセプトデータ(NDB)』,『平成27~29年度分の142病院におけるJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』を用いて,「研究① 耐性菌発現と抗菌薬使用状況の関連性の解明」,「研究② 抗菌薬治療戦略の見える化と適正使用の評価」,「研究④ 耐性菌発現および抗菌薬使用の医療経済評価」の3研究のデータ解析を行う. 「研究① 耐性菌発現と抗菌薬使用状況の関連性の解明」では,『平成22~28年度分のJANIS検査部門の全個票データ』,『平成22~28年度分の抗菌薬処方に関する全レセプトデータ(NDB)』を用いて,抗菌薬使用状況と耐性菌発現状況に関するデータを地域別・時期別にパネルデータ化し,両者の関連性を統計学的に検証する.また,『平成27~29年度分の142病院におけるJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』を用いて,施設別・時期別のデータと患者別のデータから,抗菌薬使用状況と耐性菌発現状況の関連性をより精緻に検証する. 「研究② 抗菌薬治療戦略の見える化と適正使用の評価」では,『平成27~29年度分の142病院におけるJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』を用いて,各施設のアンチバイオグラムに対して適切な抗菌薬が使用されているかどうかを評価する. 「研究④ 耐性菌発現および抗菌薬使用の医療経済評価」では,『平成27~29年度分の142病院におけるJANIS検査部門個票データおよびDPC個票データ』を用いて,MSSA症例に対するMRSA症例の追加的医療費を明らかにするための検証を行う.
|