2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment to differentiate an estimateing method using genome-wide repeat sequences between Japanese and human populations near Japan
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17H04148
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 敏充 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (50260592)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反復配列 / Alu配列 / Short tandem repeats / 日本人 / 韓族 / 識別法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画のうち、今までの研究で蓄積されていた、5地域(秋田、名古屋、大分、長崎及び沖縄)の日本人160人、並びに2地域(ソウル及び瀋陽)の韓族64人から得られた縦列反復配列であるSTR(short tandem repeat)の105座位のデータを利用して、統計学的に判別可能かどうか検討した。その結果、ベイズ的アプローチにより、強い証拠とされるベイズ因子(BF)が10以上になる日本人は約92%となり、他方、韓族であると考えられるBFが0.1未満の日本人は約28%であった。このことから、日本人由来であるというのは容易であるが、韓族由来であるというのは難しいという結果が得られた。 また、本研究のもう一つのターゲットマーカーである分散型反復配列のAlu配列については、東京大学人類遺伝学研究室から提供された、日本人約400人及び韓国人約90人の全ゲノム塩基配列データからin silicoで得られた日本人で約5000箇所と韓国人で約3000箇所のAlu挿入部位のデータの評価を昨年度、日本人のみで行い、ほぼ精度の高いデータであることが示された。そこで、本年度は、そのデータを利用して、日本人と韓国人で挿入箇所が異なり、かつ、それぞれの集団で20%以上の頻度を持つ挿入部位を選び、各集団に由来することだけが既知の各8名のDNA試料について、予備的にその挿入箇所データの評価を行い、現在そのデータを解析中である。さらに、新規Alu探索法であるレトロトランスポゾンディスプレイ法についても、次世代シーケンサによる解析までの準備を行ったが、高分子DNAをある程度低分子化する効率的な方法を検討する段階で、少し時間を要している。この方法がうまく言った段階で、生命倫理審査委員会へ申請した方が、より計画に沿っていると考えたので、当初の計画の内容をさらに一部再修正して、生命倫理審査委員会へ申請準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度から令和元年度にかけ、全ゲノム塩基配列解析のコンピュータを駆使した急速な発展に伴い、集団差ばかりでなく、個人差が、機能的な遺伝子のみならず、今までジャンクな領域と考えられ、あまり注目されていなかった縦列型及び分散型の反復配列についても、精度良く検出できるようになってきた。そのため、研究協力体制や方法論を大幅に変更せざるを得ないことが多く、またそのコンピュータデータの評価のためにも非常に時間を要することが多かった。従って、生命倫理審査委員会への申請が遅れているため、一見して非常に遅れているように感じられる。しかしながら、既存の105座位のデータを利用した、本研究の目的の一つである統計学的判別法の論文が掲載決定される至ったことは、一つの業績である。また、当初より計画していた、今まで、ヒトゲノムには適用されたことがない、レトロトランスポゾンディスプレイ法を分散型反復配列のAlu配列を新規に検出するための方法に応用する方法も、予備的な準備はほぼ整った。 さらに、約1000人の全ゲノム塩基配列データベースをもつ研究機関とも、多型的STRマーカーの選出及びマルチプレックス判定法の開発という点で、協力を続けており、今後も連携できる可能性が高くなった。 従って、全体的にみて、やや遅れていると考えるのが、妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで、レトロポゾンディスプレイ法がヒトに応用されたことがないためや、全ゲノム塩基配列解析からコンピュータワークにより効率的な研究方法が出現したため、研究方法の変更やその研究体制の確立のために申請が遅れていた、名古屋大学医学部倫理審査委員会での承認を得る。 日本人のDNA試料については、既に法医・生命倫理学研究室で保有している非連結匿名化試料のうち質の高いDNA試料を100検体選択する。韓国人(韓族)のDNA試料については、研究協力者のソウル国立大学に依頼して、ソウル在住の韓国人(韓族)の血液から抽出されたDNA試料の提供を受ける。 分散型反復配列であるAlu配列に関しては、特異的増幅の確認後、各個人特異的配列を付加したプライマーを用いて、日本人及び韓国人の各DNA試料約100検体について、レトロポゾンディスプレイ法を行う。次世代シーケンサMiSeqにより塩基配列を決定し、各個人のゲノム上でのAlu配列の挿入部位を決定する。また、現在所有している東京大学より提供された、日本人及び韓国人の全ゲノム塩基配列解析データよりin silico解析で得られた、各集団におけるAlu挿入部位のデータを用いて、集団ごとにAlu挿入部位を比較して各集団特異的部位を選択する。 縦列反復配列のSTRsに関しては、同様に日本人及び韓国人のDNA試料を用いて、一方のプライマーに各個人特異的配列を付加したプライマーを、250座位の座位ごとに用意し、これらを混合後、PCR増幅を行い、次世代シーケンサMiSeqによる塩基配列決定解析を受託会社に委託する。各個人の塩基配列から得られた型判定結果から、集団遺伝学的解析を行い、両集団で異質性の高いSTR座位を選択後、判別可能なカテゴリー分析あるいは判別分析について検討する。 可能ならば、東北大学のゲノムバンクの協力を得て日本人で識別力の高いSTRs座位を選択する。
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