2017 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌間質のもたらす免疫抑制機能の網羅的解析と治療応用
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17H04156
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下瀬川 徹 東北大学, 医学系研究科, 客員教授 (90226275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 晋 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20451560)
正宗 淳 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90312579)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は膵癌間質と免疫細胞・癌細胞間の相互作用に関わる分子を同定するため、ヒト膵癌組織・マウス膵癌モデルの膵癌組織について検討を進めた。ヒト膵癌組織については、これまでの検討でインテグリンシグナルの調節因子であるKindlin-2が膵星細胞による癌進展促進に寄与していることを報告している。この知見に基づき、他のインテグリンシグナル関連分子について免疫染色を実施し、α smooth muscle actin陽性を示す活性化膵星細胞で発現する分子を同定した。同分子に対するshRNAを導入した細胞株を樹立し、活性化膵星細胞のマーカー発現を検討したところα smooth muscle actinの発現低下がみられた。この細胞株では膵癌細胞との共移植実験でみられる腫瘍形成能の増強効果が減弱しており、癌進展に寄与していることが示唆された。 マウス膵癌モデルでは、酸化ストレス応答の中核分子であるNrf2欠損により膵発癌が抑制されることを見出した。このマウスでは膵に形成される前癌病変周囲への炎症細胞浸潤が減弱していた。癌細胞側の因子で炎症の惹起に関与する分子の発現変動を検討したところ、核内に発現するアラーミンの一種が減少していることが確認された。マウス膵癌細胞に酸化ストレスを誘導するとこの分子のmRNA発現が増加することが判明し、新たなNrf2標的遺伝子と考えられた。これらのインテグリンシグナル関連分子や炎症惹起物質が免疫細胞に与える影響について、今後検討が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は膵癌細胞・間質細胞の相互作用に関わる分子を同定することができた。また、酸化ストレス応答機構によって制御される分子の中に炎症性シグナルに関わる分子が含まれることが判明し、膵癌進展過程での炎症惹起に寄与していると考えられた。以上より、本年度の進捗状況はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化ストレス応答機構の活性化は膵癌局所での炎症惹起に関わることが判明したため、酸化ストレス応答を欠損したマウスから分離培養した膵星細胞と膵癌細胞の共培養を行い、間質側での炎症惹起・免疫抑制機構の詳細を明らかにする。炎症や免疫抑制に関わる新規分子マーカーを同定し、ヒト膵癌における発現様式・予後との関連についても検討を行う。
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