2017 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん作用を併せ持つ画期的な鎮痛法の開発-正に電化した局所麻酔薬を用いて-
Project/Area Number |
17H04322
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
川股 知之 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80336388)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん性痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者管理において、鎮痛薬はがんの生育にはほとんど影響しないことから、鎮痛治療と抗がん治療は別に考えられてきた。研究者はこれまでの研究でTRPV1発現神経の活性化ががんの痛みの伝達とがんの増殖に重要な役割を果たしていることを明らかした。したがって、TRPV1発現神経をターゲットにすることにより鎮痛とがん増殖抑制を同時に行うこれまでにない画期的な治療法を開発できる可能性がある。そこで本研究では、活性化したTRPV1発現神経を選択的に抑制できる正に電荷した局所麻酔薬を用いて、がん増殖を抑制する画期的な鎮痛法を開発することを目的とした。平成29年度は、足底がん痛モデルの開発と評価することを目的とした。モデルは、雄性C57BL/6マウス(5-6週齢)とLewis肺がん細胞(LLC)を用いて、がん細胞を5x106/20 Lの濃度に調整し、全身麻酔下に、インスリン注射器を用いてマウスの左足底皮下にLLCを移植し作製した。がん細胞増殖の評価は、足容積測定装置(Ugo Basile 37140)を用いて、移植側と反対側の足容積を非侵襲的に経時的に測定した。次に、痛みの行動評価として、Von Frey filamentよる逃避閾値、熱輻射装置(Ugo Basile 37370)を用いた侵害熱刺激に対する逃避潜時、および足振り行動(flinching)や足舐め(licking)に費やす時間を経時的に測定した。組織学的評価では、下肢および足底に投射するL3/4/5後根神経節を採集し、phosphorylated CREB(pCREB)の免疫染色を行い、発現について定量評価した。その結果、がん移植モデルでは、経時的に腫瘍が増大し、それには伴なって、痛みが増強する事が明らかになった。また、組織学的にも、痛みの増強にともなってpCREB陽性神経が増加することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、足底がん痛モデルの開発と評価することを目的とした。モデルは、雄性C57BL/6マウス(5-6週齢)とLewis肺がん細胞(LLC)を用いて、がん細胞を5x106/20 Lの濃度に調整し、全身麻酔下に、インスリン注射器を用いてマウスの左足底皮下にLLCを移植し作製した。がん細胞増殖の評価は、足容積測定装置(Ugo Basile 37140)を用いて、移植側と反対側の足容積を非侵襲的に経時的に測定した。次に、痛みの行動評価として、Von Frey filamentよる逃避閾値、熱輻射装置(Ugo Basile 37370)を用いた侵害熱刺激に対する逃避潜時、および足振り行動(flinching)や足舐め(licking)に費やす時間を経時的に測定した。組織学的評価では、下肢および足底に投射するL3/4/5後根神経節を採集し、phosphorylated CREB(pCREB)の免疫染色を行い、発現について定量評価した。その結果、がん移植モデルでは、経時的に腫瘍が増大し、それには伴なって、痛みが増強する事が明らかになった。また、組織学的にも、痛みの増強にともなってpCREB陽性神経が増加することが明らかとなった。以上により、概ね計画通りに研究は進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に確立したモデルを使用しする。TRPV1遺伝子欠損マウスとTRPA1遺伝子欠損マウスを用いて腫瘍の増殖、がんの痛みに関するTRPV1とTRPA1の関与を検討する。平成29年度同様に、ん細胞増殖の評価は、足容積測定装置(Ugo Basile 37140)を用いて、移植側と反対側の足容積を非侵襲的に経時的に測定する。次に、痛みの行動評価として、Von Frey filamentよる逃避閾値、熱輻射装置(Ugo Basile 37370)を用いた侵害熱刺激に対する逃避潜時、および足振り行動(flinching)や足舐め(licking)に費やす時間を経時的に測定する。組織学的評価では、下肢および足底するする。これらについて野生型マウスと比較検討する。
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