2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞を用いた人工胎盤の創成と胎盤機能再生医療の開発
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17H04339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 英治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10544950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽根 正勝 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40437207)
山原 研一 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50450888)
千草 義継 京都大学, 医学研究科, 助教 (80779158)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎盤機能不全 / 妊娠高血圧症候群 / 胎盤機能再生医療 / iPS細胞 / 人工胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤機能が妊娠中期(妊娠12-28週)に不全状態に陥ると、児は神経学的障害や発達障害を合併する頻度が高くなる。現在は待機療法が主流であるが、予後が不良な症例も多数存在しており、新規治療法の開発が待たれる状況である。2013年iPS細胞由来の肝細胞と血管内皮細胞、羊膜幹細胞を共培養することで3次元構造を有する機能的な人工肝臓を作成が成功したことが報告された。この報告に次いで、腸、肺、腎臓、心臓、脳など各種臓器の立体的器官芽作成が報告されたが、いまだ胎盤の作成に関する報告はなされていない。一方で、ES細胞やiPS細胞から絨毛様細胞を誘導する方法は確立されつつあるが、その細胞生物学的性質や分化過程は未だ不明な点も多い。本研究はiPS細胞を用いて機能的なヒト胎盤を創り出し、胎盤機能不全に対する「人工胎盤移植による胎盤機能再生医療」を開発し実臨床へ展開するための基礎的知見を得ることを目的とする。現時点での具体的な実績としては1. ヒトiPS細胞からの絨毛様細胞への誘導とその生物学的性質についての検討、2.試験管内での立体的胎盤器官芽(ミニ胎盤)の作成、3.作成した器官芽の免疫不全マウスへの移植の3点を遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的過程については、1.ヒトiPS細胞から絨毛様細胞への分化過程における遺伝子発現パターンをqPCR法でiPS細胞の状態から誘導8日目まで2日毎に評価した。誘導4日目の細胞においてiPSマーカーのOCT4と絨毛幹細胞マーカーのCDX2が減少し、細胞性栄養膜細胞マーカーのCK7が増加している点から、誘導4日目の絨毛様細胞が初期の胎盤器官芽作成に至適であることを見出した。同様の結果を細胞染色法、ELISA法でも確認した。2.誘導したヒトiPS 細胞由来絨毛様細胞に、当院の帝王切開患者より採取した臍帯由来の血管内皮細胞と羊膜由来の間葉系幹細胞を加え72時間共培養することで、胎盤の立体的器官芽を作成することに成功した。作成した器官芽の免疫染色を行い、1.で得られたものと同様の各種マーカーの発現を確認した。3.作成した器官芽を免疫不全マウスの子宮内に局注することで、局所への生着を確認した。また子宮に生着した器官芽には絨毛細胞のマーカーであるHLAGが発現していることを摘出子宮の免疫染色で確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
胎盤機能不全に対する治療を研究のゴールに設定した場合、最終的な移植臓器は胎盤となる。妊娠免疫不全マウスの胎盤への器官芽移植を試みたが、4例施行したうち1例は術直後に流産となった。残り3例で胎仔4~5匹のうち2~3匹(約50%)は子宮内死亡となった。生体仔の体重はコントロール群の平均0.8gに対して0.4g前後と1/2程度の発育不全を認めた。胎盤重量に明らかな差は認められなかった。胎盤への移植は実験手技としての難易度が高く、手技の再検討を要すると思われる。
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Research Products
(2 results)