2017 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋地域における地域・特性に適したCCS包括的法規制の構築に関する研究
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17H04488
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柳 憲一郎 明治大学, 法学部, 専任教授 (80132752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 英司 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(専門研究員) (10391103)
岡松 暁子 法政大学, 人間環境学部, 教授 (40391081)
大塚 直 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90143346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CCS / 包括的法規制 / アジア太平洋地域 / ポリシー・ミックス / 2・多国間協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア太平洋地域におけるCCSの社会実装を目指すため、この地域に適用する包括的なCCS法の基本的枠組みや多国間協調のあり方を見出す必要がある。地域特性の大きく異なる複数国を対象にこれらの知見を蓄積し、事例の比較研究・専門家との協議を実施しない限り、アジア太平洋地域で適用できる法規制等の制度を見出すことは難しい。 そこで、本年度はアジア太平洋地域の中でこれまでCCS法の法制化において先進的な取組を行っており、CCS法規制を制度化し、CCSの実証まで進展しているオーストラリア(以下、「豪」とする)を対象に、日本のCCS関連法規制・施策等との比較分析を実施した。また、州政府にヒアリングを実施し、法制度上の課題、問題点を明らかにした。 豪では、海域では連邦法である海洋石油・温室効果ガス貯留法(2006年)及び関連の連邦法が適用され、CO2貯留の長期責任及び責任移転の規定も入れて法制化している。一方、陸域・沿岸域では州法、例えばビクトリア州では陸域は温室効果ガス地中隔離法(2008年)、沿岸域は沖合石油・温室効果ガス貯留法(2010年)が適用され、関連する法規制も主に州法が適用される。貯留サイトの連続性のため異なる管轄区域の許可申請が必要となり、法的手続きに時間を要する。また、連邦法と州法では長期責任の考え方や制度が異なるため、法的要件を満足することが難しく、大きな障害となっている。 一方、わが国は海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の改定により海底下のCO2廃棄が実施できるが、長期管理・責任は規定されておらず、陸域に至ってはCO2貯留に関する法律さえない。本年度の研究では、管轄区域を越えて長期的貯留を可能とし、長期的責任を担保する法的オプション、あるいは包括的な制度がCCS事業の実施段階では求められることを明らかにしたが、法政策的には非常に難しい課題であると言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究方法・計画に示した通り、初年度のオーストラリアの法規制・政策に関する研究内容はすべて実施し、豪のビクトリア州及び西オーストラリア州の州政府のCCSの規制、政策担当者へのヒアリング・議論を行い、CCS法を社会実装しているCCS開発先進国のCCS事業の現状と法規制等の課題について明らかにした。その研究結果に基づき、わが国とのCCSの法規制制度との比較研究を行い、本研究の骨格となる包括的CCSの基本的枠組みと個別対応すべき制度的課題を明らかにした。 また、アジア開発銀行のCCS開発の担当者、3年度目に現地調査を行うインドネシアの政府機関及び企業のCCS担当部署の担当者が参加するセミナーに参加し、アジアのCCSの法規制の現状や実証実験への取組などに関し、協議を行い、アジア諸国のCCS関連法規の比較研究に基づくほとんどのアジアの諸国ではCCSを実施、推進する法政策が未整備でCCS事業が実施できない状況であることを明らかにした。 これらの結果から、アジア太平洋地域では、本課題である「アジア太平洋地域における地域・特性に適した包括的なCCS法規制の枠組み」や「適地にCCSを導入することを図る最適なポリシー・ミックスや国際間協調の枠組み」の構築が当該地域のCCS事業の実施には必須であることを論究した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、管轄区域を越えて長期的貯留を可能とし、長期的責任を担保する法的オプション、あるいは包括的な制度がCCS事業の実施段階では求められることを明らかにし、地域・特性に適した包括的なCCS法規制の枠組みや適地にCCSを導入することを図る最適なポリシー・ミックスや国際間協調の枠組みの提示が必要であることを再度明らかにした。この課題の解決には、IEAが取りまとめたCCSの制度的課題(2010)ごとに、特に長期管理・責任を担保する規定については各国の地域特性や貯留特性、適用技術を考慮した包括的CCS法を整備するための課題を共有し、各国の検討・研究成果を踏まえ議論することにより合理的なCCS法の基本的枠組みを明らかにしていく必要がある。 このためには、初年度に引き続き2年目にCCS法の整備がなされていないが実証プロジェクトが多くある中国、3年目に貯留ポテンシャルが大きくCCSが期待できるが法制化が全く進んでいないインドネシアとCCSを取り巻く社会環境が大きく違う国を対象とし、事例研究及び現地調査を通じて、現行の制度的課題を明らかにし、それに対して法規制・政策を立案すべきか、包括的CCS法やポリシー・ミックスや国際間協調を整備するべきか明らかにする。 最終年度は、わが国を含め4か国で調査研究した結果を取りまとめることにより、各国で異なる経済的・社会的・環境的状況や地貯留サイトの地域特性に柔軟に適用できる包括的CCS法の基本的枠組みを研究し、見出すことを試みる。 本研究の実施に当たっては、既にCCS法を制度化し、実証、操業を実施している国の知見やその法制度上の課題、及びその解決に向けた法的オプション・包括的制度の研究成果のインプットが必須であることから、CCS研究拠点であるIEA、ADB、WRI、GCCSIと連携しながら研究を進める予定である。
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Research Products
(34 results)