2019 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋地域における地域・特性に適したCCS包括的法規制の構築に関する研究
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17H04488
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柳 憲一郎 明治大学, 法学部, 専任教授 (80132752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 英司 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (10391103)
岡松 暁子 法政大学, 人間環境学部, 教授 (40391081)
大塚 直 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90143346)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 包括的CCS実施法 / アジア太平洋地域 / 地域特性 / CCUS / 共通プラットホーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度実施したインドネシアでの調査結果は以下のとおりである。インドネシアでは経済の急成長を遂げているが、同時に石炭依存度が高く、地球温暖化や大気・水質汚染に伴う環境悪化も増大している。 インドネシアは2030年までのGHG削減の長期目標(INDC)として29%削減(条件なし)、41%削減(条件あり)を掲げている。現在インドネシアの貯留ポテンシャルは10 Gt以上が特定されており、CCSによる削減が盛り込まれており、実用化が喫緊の課題となっている。 現地調査の結果、インドネシアにおけるCCSの法規制は制定されておらず、現行法(例えばMinister Regulation No.13 /2007)を修正し、実証プロジェクトを許可し、実施する予定である。インドネシア政府は、今後2500~5000トン/日で20年以上の貯留を計画しており、その実施のためCCS大統領令を策定しているところであり、主に現行法との関係、許認可制度、報告と検証、閉鎖措置と閉鎖後責任、長期責任とインセンティブの規定が検討されている。 CCSの特定規定である長期責任に関連する閉鎖の認可、閉鎖後の長期維持管理の責務、責任移転、長期財政メカニズムの法制化が求められるが、EU指令等と比較し、わが国と同様まだ不十分であると考えられ、長期の適正実施を担保し、クリアランズレベルになるまで安全・環境の長期保障を担保するCCS法規制とする必要がある。 インドネシアでは、大きな貯留ポテンシャルが局在しており、各地域のエネルギーの需給構造とCO2排出源に依存し、CO2回収の対象施設やパイプラインなど社会インフラの整備が求められることから、今後のGHG削減達成計画や温暖化政策ともにエネルギー計画や社会資本整備計画等にも言及する統合的な政策と規制の枠組みが必要であることから、アジア諸国で適用可能なCCS法政策フレームワークを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目はインドネシアの現行法及び現在策定中のCCS大統領令に関する研究内容などをすべて実施し、インドネシア政府における政策担当者及びCCSの中核研究機関となっているバンドン工科大学研究者へのヒアリング・議論を行い、関連施策を含め、その課題の検討を行った。その結果に基づき、わが国とのCCSの法規制制度との比較研究を行い、CCS大統領令には長期の適正実施を担保する規制が十分でなく、それを実施するための財政措置や関連施策の不十分性を明らかにした。 また、これまで研究ネットワークのあるADBが主催するCCS専門家ワークショップに参加し、ADBの担当者やタイ、バングラデシュ、インドの政府のCCSやエネルギーの担当者と協議を行った結果、貯留ポテンシャルが大きい他のアジア諸国でも長期責任や長期的な財政措置などの検討・法制化はほとんどなされておらず、早急に整備する必要があり、このことがCCSを大規模に導入する場合に大きな障害となっていることなどが明らかになった。 また一方、貯留層が複数国の領土にまたがる場合も想定されていることから、現在、ロンドン条約で制約されている越境移流などの特有な問題などにも対処する必要が明らかになったことから、貯留、CCS実施の域内基準化及び域内協定を策定し,域内で実施可能とする必要性を明らかにした。 これらの諸国では、CCSの技術基盤や専門家がほとんどいなく、CCSを推進する政府機関・企業も存在していないことから、技術移転を含めた技術開発・社会インフラ開発の推進、CCS技術の域内標準化、2国間・多国間共同実施に向けた域内協定が必須となった。 このようにアジア太平洋地域に最適なポリシー・ミックスや国際間協調の枠組みの構築が当該地域のCCS事業の実施には必須であることから、最終年度にCOVID-19に留意しながらこれまでの研究成果に基づき、それらを提示できるよう研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる4年目は、過去3か年で調査研究した結果を取りまとめるとともに、各国で異なる経済的・社会的・環境的状況や貯留の地域特性に柔軟に適用できる包括的CCS法の基本的枠組みを明らかにする。 特に、超長期管理を含めCCSの導入に向けて諸外国で採用され、効果のある直接的手法と間接的手法に関する研究・分析を進め、各国の社会経済的状況を踏まえた分析を行い、各政策手法の効果やCCS法との関連性を検討を進める。これにより、CCS法を援用し、当該地域にCCSを円滑に導入させるポリシー・ミックスを検討し、明らかにする。 これらの検討成果に基づき、アジア太平洋地域における地域・特性に適したCCS法規制の枠組みを提言するとともに、ポテンシャルの大きいアジア諸国にCCSを導入することを図る効果的なポリシー・ミックスや国際間協調の枠組みを見出すことを目指す。 また、これらの研究については国内の研究者による先行研究を行い、包括的CCS法の基本的枠組み、ポリシー・ミックスや国際間協調の枠組みを取りまとめる。 取りまとめた後、対象国3か国及びADBの専門家や国内の協力研究者と連携を図り、アジア太平洋地域で適用可能な包括的CCS法の基本的枠組み、ポリシー・ミックスや国際間協調の枠組みを見出し、最終的にはアジア域に向けて包括的なCCS法規制の提言を行うことを目指したい。
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Research Products
(19 results)