2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17H04517
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
松長 有慶 高野山大学, 文学部, 名誉教授(移行) (30086029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 仁志 高野山大学, 文学部, 教授(移行) (30168421)
松長 恵史 高野山大学, 文学部, 教授(移行) (90768897)
内藤 栄 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 部長 (40290928)
那須 真裕美 種智院大学, 人文学部, 講師(移行) (40424973)
加納 和雄 駒澤大学, 仏教学部, 講師 (00509523)
櫻木 潤 高野山大学, 文学部, 助教 (10454604)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インドネシア / 密教の流伝 / 金剛頂経 / 曼荼羅 / 海洋交易路 / 密教法具 / ヴァジュラヤーナ / 刻入銘文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はインドからの海洋交易ルートによって形成されたインド文化圏に属するインドネシア諸島において、8世紀から14世紀に盛行した密教系仏教の実像解明を目的としている。 その目的のもとに、初年度は現地博物館を中心とする資料収集を実施した。2年目に当たる今年度は、現地より収集した資料に関して研究分担者ごとに分析作業を中心に進めた。 合同調査として8月初旬にジャカルタ国立中央博物館に収蔵されている曼荼羅を構成する尊像群と法具類の蛍光X線機器を使用した成分分析を実施し一定の成果を得た。蛍光X線機器を使用した成分分析研究に関しては、次年度も継続して実施する予定にしている。その後、ジャワ島東部地域の遺蹟・博物館の調査を実施した。 また、12月の中旬にはかつてのインドネシア諸島の宗主国であったオランダの博物館の調査を実施した。インドネシアの遺品を保管する3つの博物館には、相当数の密教系仏教の仏像、法具類、経典が収められており、今後も継続して調査をする予定である。とくに、経典に関しては、未発表のものもあり随時内容解明を進めていく。 さらに、2月にはスマトラ島南西部地域の遺蹟・遺品の調査を実施した。この調査では、スマトラ島に多数出土している金属製マントラに関しての資料収集を重点的に実施した。金属製マントラは大きさや種類も豊富で、その用途も含め今だ解明されていない部分が多く、継続調査が必要となる。 上記以外に、6月にジャカルタで現地調査員との合同会議を実施して、現状での調査の進捗状態、および今後の研究計画について検討を加えた。また、7月にはバリ島において島内寺院のロンタル経典の収蔵確認のための調査体制の見直しを現地協力員と行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
密教遺品の資料収集、および調査に関しては、一部を残しほぼ終了したといえる。ただ、当初調査対象地としていたロンボク島、カリマンタン島、スラウェシ島に関しては、調査対象となる遺品がないとの報告が現地調査員よりあり、今回の調査では見送ることにする。それに対して、インドネシア出土の密教遺品の多くが旧宗主国であるオランダに多数存在していることがわかった。これらの遺品は、インドネシアの密教の性格を明確にするためには質量ともに欠かすことのできない資料であるといえる。昨年度からインドネシア国内における蛍光X線機器による成分分析の予備的調査を始めており、オランダの博物館収蔵品に関しても蛍光X線機器による成分分析調査に対する現地協力者との協力体制がとれており、今後継続的に実施していく予定である。遺品調査に関しては、計画していた以上に進展しているといえる。 それに対して、博物館やバリ島寺院内に収蔵される経典(ロンタル)の資料収集に関しては、バリ島現地協力員の懸命の活動にもかかわらずバリ島寺院内からの新資料の発見には至っていない。ただ、調査の過程を通じて、現在まで明らかにされてこなかったバリ島寺院内収蔵のロンタルの内容が徐々に明確になり、一部密教関係のものもその中に含まれていることが明らかになった。今後も各寺院の収蔵ロンタルを継続調査していく。文献調査に関しては、その一方でオランダの博物館に収蔵されている写本の研究に着手しており、一部新たな知見が得られた。文献調査に関しては、今後バリ島寺院を含むインドネシア国内と、オランダを中心とするヨーロッパ地域に現存するロンタルの両方向から調査・分析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの調査の結果、インドネシア国内で確認できる密教遺品の調査対象物は、仏像や金剛杵、金剛鈴等の法具類、粘土製タブレット、奉納仏塔、金属製マントラが大部分を占める。厳密に見れば、金剛杵、金剛鈴とともに密教儀礼で使用される金属製の器や瓶などの法具類も密教遺品に含まれるが、今回の調査対象には含めない。 今年度は、インドネシア国内での密教遺品の全貌を明らかにするために、未調査の博物館であるジャワ島中部のソロ博物館、およびスマトラ島北部のメダン博物館の現地調査を実施する。また、蛍光X線機器による分析調査も随時実施していく予定であるが、インドネシア国内に限っても年度内に全調査を終了することは数のうえからしても困難であると思われる。また、オランダにおいてインドネシア遺品を収蔵するレイクス博物館、トゥルパン博物館、ヴォルケンクンデ博物館の収蔵庫も含めた収蔵品の調査を実施し、今年度中に全貌を把握し、今後の蛍光X線機器を使用した成分分析研究につなげていきたい。 文献調査に関しては、バリ島寺院収蔵のロンタル、特にバリ島北東部にあるカランガスム地区の寺院に収蔵されるロンタルに絞り継続調査を実施していく。また、オランダ国内に現存するロンタルの調査・分析は、オランダ人の研究協力者の協力を得て、調査、および読解作業を並行して実施する予定である。 また、今年度は海外科研調査の最終年度でもあり、それぞれの研究分担者、およびインドネシア現地協力員がこれまでの実施した調査・研究に関して、日本語、英語での両国共著による研究成果報告書の出版を予定している。
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Research Products
(4 results)