2017 Fiscal Year Annual Research Report
Air Irrigation:乾燥地の大気由来の未利用水資源で実現する節水農業
Project/Area Number |
17H04634
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森 牧人 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (60325496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 雅治 九州大学, 農学研究院, 教授 (30153109)
木村 玲二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (80315457)
丸居 篤 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (80412451)
長 裕幸 佐賀大学, 農学部, 教授 (90136599)
安武 大輔 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90516113)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 灌漑 / 結露 / 露 / Air-irrigation / 節水 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度では,先ず申請者らが維持してきた蘭州市郊外の実験圃場のメンテナンスとして,気象・水文環境のモニタリングシステムにおける老朽化したデータロガーおよびセンサ類を更新した.この気象・水文環境システムの観測データは,以下の事項に共通して関わるため,これらの更新作業は優先して行う必要があったためである. 作物個体レベルにおいて葉面結露による葉の濡れが作物水分動態・光合成に及ぼす影響を調べるために,現地試験圃場で容易に利用可能な新たな計測システムが必要になる.そこで,茎内流量センサを内蔵した通気型個体チャンバシステムの製作に着手し,チャンバのガス収支(水蒸気,CO2)によって蒸発散速度(葉の濡れの蒸発速度+蒸散速度)と光合成速度を,茎内流量によって蒸散速度をオンサイト・リアルタイムで計測できるシステム構成について検討した.さらに,このチャンバシステムを,葉面結露が無い昼間の作物に適用することで,チャンバの水蒸気収支および茎内流量センサで得た蒸散速度の値を比較検証し,チャンバシステムによる計測値の妥当性についての検討に着手した. 個体チャンバシステムを葉面結露が発生している作物に適用し,葉面結露による葉の濡れの発生・消長に伴う作物個体の水関係要素の日変化を,環境の蒸散要求度と関連付けて明らかにするための準備を行った。 Air Irrigation 効果を群落レベルで検討するためには,葉面結露の発生およびその基となる大気(群落上,群落内葉近傍)の水蒸気動態とそのメカニズムを解明する必要がある.そこで,現地実験圃場の気象・水文環境データに基づいて,水蒸気の供給要素である群落の蒸散速度と土壌面の蒸発速度の動態を評価した.さらに,多層の大気を想定した独自の微気象モデルのプロトタイプを構築し,群落上・群落内葉近傍の大気水蒸気と葉面結露の発生・消長を解析する手法について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度において,先ず申請者らが維持してきた蘭州市郊外の実験圃場のメンテナンスとして,気象・水文環境のモニタリングシステムにおける老朽化したデータロガーおよびセンサ類を更新したが,更新時期が少し遅れたために,茎内流量センサを内蔵した通気型個体チャンバシステムの製作も若干であるが遅れ気味である。また、現地実験圃場の気象・水文環境データに基づいた,群落の蒸散速度と土壌面の蒸発速度の動態評価にも同様である。さらに,多層の大気を想定した独自の微気象モデルはプロトタイプを構築した段階であり,群落上・群落内葉近傍の大気水蒸気と葉面結露の発生・消長を解析する手法について検討するに留まっている状況である。ただし,以上は今年度の現地調査・研究遂行で十分にその遅れを取り戻すことができる範囲である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目になる平成30年度では,Air Irrigation 効果による灌水量削減の可能性を圃場スケールで提示することを目指す。さらに,Air Irrigation効果を広域レベルで評価するための準備も開始する.具体的な計画・方法は以下の通りである。 葉面結露の有無による作物への影響を解明するために,夜間に作物周辺を微加温して葉面結露が発生しない作物サンプルを準備する.その作物と葉面結露が発生し濡れた通常の作物を対象に,作物個体の水関係(蒸散速度,気孔開度,水ポテンシャル,膨圧など)の日変化を個体チャンバおよびSPACに基づく独自の植物-環境系水輸送モデルを使って評価する。さらに同様の個体に対して光合成速度の日変化を調べる.その結果に基づいて,葉面結露が作物個体レベルの水利用効率の日変化に及ぼすAir Irrigation 効果を明らかにする。 群落レベルにおける葉面結露の発生・消長プロセスおよび大気(群落上,群落内葉近傍の空気)の水蒸気動態を微気象多層モデルによって比較的長期間(栽培期間である4 月下旬~10 月上旬を目途)に渡って評価する. この葉面結露動態の長期データと葉面結露に対する作物個体レベルの水関係・水利用効率の応答特性を統合し,葉面結露が群落レベルの水関係と水利用効率に及ぼす影響を栽培期間を通して評価する.葉面結露による群落レベルの水利用効率の向上効果を考慮して,適切な土壌水分状態と実験圃場あたりの灌漑要求量を評価する.それによって,従来実施されてきた灌漑において削減可能な灌水量を定量的に推定する.
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Research Products
(5 results)