2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属―酸化物ナノ材料を複合化した高性能透明導電膜による太陽電池高効率化
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17H04721
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 俊 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (30706809)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Cuナノワイヤ / 合成機構 / アスペクト比 / 低環境負荷合成 / 液相還元法 / アスコルビン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、低環境負荷なCuナノワイヤの合成を達成した上で、形状および表面吸着物を制御することでナノワイヤから得られる透明導電膜の性能を向上させることを目的として研究開発を行った。 既存のCuナノワイヤの合成法では、有機溶媒、高温、高圧、毒性の高い試薬を必要とする手法が主流であるが、水系、室温付近、大気圧環境下において、塩化銅錯体を、ビタミンCであるアスコルビン酸によって還元し、塩素イオンおよびポリビニルピロリドンが表面保護剤となりCuナノワイヤの合成する、低環境負荷な合成法の開発に成功した。Cuナノワイヤから形成される透明導電膜の性能は、Cuナノワイヤのアスペクト比(直径に対する長さの比)に大きく依存し、高アスペクト比なナノワイヤが求められる。合成反応機構を解析した際に、本合成系では、溶存酸素と溶存酸素とアスコルビン酸の反応から生成する過酸化水素によって、Cuナノワイヤおよび還元剤であるアスコルビン酸が酸化され、ナノワイヤのアスペクト比が低くなることを明らかとした。そこで、不活性ガスによる溶存酸素の除去等によって、Cuナノワイヤの成長中における酸化反応を抑制することで、アスペクト比を向上することに成功し、直径120 nm程度、長さ36 um程度のCuナノワイヤの合成を達成した。更に、本反応系から得られたCuナノワイヤは、表面にポリビニルピロリドンが残存することによって、低温熱処理における透明導電膜形成時には接触抵抗が増加する。そこで、クエン酸を用いた新規表面処理によって、ポリビニルピロリドンの除去および、クエン酸による再被覆を達成した。クエン酸は200℃以下の加熱によって分解するため、低温熱処理における透明導電膜形成時には分解し、透明導電膜の抵抗を改善することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はCuナノワイヤの低環境負荷の合成を達成した後、形状、表面制御による透明導電膜の性能向上を目的としており、当初の計画通りの目的を達成しているため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、Cuナノワイヤと酸化物ナノ材料を複合化することで、太陽電池応用に適した高性能な複合透明導電膜の形成を目的としている。そのため、酸化物との複合形態制御、酸化物へのドーピングによって、太陽電池に適した透明導電膜を形成し、更に、性能についても向上させる予定である。ただし、Cuナノワイヤのアスペクト比、表面保護剤についても、未だ向上の余地は残されているため、複合透明導電膜の性能を確認しながら、酸化物だけでなく、Cuナノワイヤの形状や表面制御についても引き続き検討することで、更なる優れた透明導電膜の開発を試みる。
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