2017 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞の機能制御のための構成論的な細胞外マトリックス模倣手段の開発
Project/Area Number |
17H04741
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
干場 隆志 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 准教授 (00469769)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 細胞外マトリックス / 脱細胞化マトリックス / バイオマテリアル / 神経幹細胞 / がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療の鍵となる幹細胞の分化制御技術の開発のため、細胞外マトリックス(ECM)を模倣した培養基板が開発されている。生理活性物質が修飾された培養基板は、分化制御の点で限界があり、種々の分化現象を制御できる脱細胞化マトリックスは安定かつ大量の調製が困難である。簡便なECM機能の模倣手段が必要である。我々は脱細胞化マトリックス上でも特定のシグナル分子により幹細胞の分化が制御されていることを見出した。そこでECMの機能モジュールとして生理活性物質を培養基板に修飾、シグナル経路を活性化し、脱細胞化マトリックス上の幹細胞の分化と比較する。修飾分子の種類や量の最適化により、ECMの模倣手段を要素還元論的手法から、構成論的手法へと転換させ、幹細胞の分化制御用の培養基板を作製する。 平成29年度においては、まず、培養された神経幹細胞(NSC)由来の脱細胞化マトリックス上における細胞機能の評価に取り組んだ。NSCは作製された脱細胞化マトリックス上に接着し、また増殖することができ、かつ神経細胞への分化が抑制された。しかしながら、細胞接着が弱いため、改善の必要性も明確になった。 また、NSCの代わりに培養がん細胞の脱細胞化マトリックス上での抗がん剤耐性機構の発現機構についても明らかにし、抗がん剤曝露後にTGF-βが発現し、脱細胞化マトリックス中のコンドロイチン硫酸に結合し、TGF-βシグナルが増強されることで上皮間葉転換を強く誘導した結果、薬物排出トランスポーターの発現が上昇し、抗がん剤耐性が発現することを見出した。 また、同時に筋分化時のECMを段階的に模倣した脱細胞化マトリックスについても作製し、細胞接着性を有しながらも、増殖性が変化することを見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
神経幹細胞の脱細胞化マトリックス上における細胞機能の発現機構の解明に関しては、当初の計画よりも遅れることが予測された。しかしながら、構成論的手法によるECMの模倣のために、NSCの分化制御の代わりにがん細胞の抗がん剤耐性に着目し、脱細胞化マトリックス上における発現機構を検討した結果、コンドロイチン硫酸がEMTを強く誘導することで抗がん剤耐性の上昇に大きく寄与していることを見出した。そのため、これまでに報告しているラミニンによるAktの活性化およびコンドロイチン硫酸によるTGF-βシグナルの増強を組み合わせることで、がん細胞の抗がん剤耐性を亢進できる材料ができると考えられた。そこで、MSCの分化制御に合わせて、がん細胞の抗がん剤耐性を向上させる培養基板を構成論的に作製するための基礎的な知見は得られたと考えた。 また、当初の計画になかった筋分化時のECMを模倣した培養基板の作製にも成功しており、細胞機能の解析を行っている。そのため、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
神経幹細胞(NSC)の分化制御のための構成論的手法により設計された培養基板の作製には時間が必要と考えられたため、今後は、MSCの分化制御およびがん細胞の抗がん剤耐性亢進のための、構成論的手法で設計された培養基板の作製に取り組む予定である。
|